2017-01-15 14:09 | カテゴリ:未分類

男の子がなりたい職業、「学者」2位に急上昇 連続ノーベル賞効果か 第一生命調査

 第一生命保険が6日発表した「大人になったらなりたいもの」のアンケート結果によると、男の子で「学者、博士」が2位となり、前回の8位から大幅に上昇した。第一生命は「日本人のノーベル賞連続受賞の影響があるのではないか」と分析している。

 男の子の1位は7年連続で「サッカー選手」、3位は「警察官、刑事」だった。前回18位の「水泳選手」が8位に浮上した。2016年夏に開かれたリオデジャネイロ五輪で日本人選手が活躍した影響とみられる。

 女の子は「食べ物屋さん」が20年連続の1位となり、人気を維持した。2位は「保育園・幼稚園の先生」、3位は「学校・習い事の先生」と続いた。また「ダンスの先生、ダンサー、バレリーナ」が10位と、09年以来のトップ10入りとなった。

 アンケートは第一生命が1989年から毎年実施しており、今回は16年7~9月に実施。全国の幼児や   小学生ら1100人の回答を集計、分析した。
 
 
 
      このニュースはすべての全国紙に掲載されているようだ。実にノーベル賞の効果は大きいと思う。子供は将来の生活のことなんか考える必要がないから、純粋に「理想の人物像」を具体的にノーベル賞受賞者 やサッカー選手に自らを同化して考えることができるのだろう。
 
  
    自分のことを顧みても、なんと言っても1949年の日本人初の湯川秀樹博士によるノーベル物理学賞受賞の影響は強烈だった。当時小生は満8才で、高知市旭第一小学校から芦屋市宮川小学校に転校したころであった。研究内容などはなんにもわからなかったのだが、世界で賞賛される栄誉みたいなものがまぶしくて仕方がなかった。5年生の時の国語の教科書には湯川スミ夫人によるノーベル賞受賞記念式典のときの印象記が載っていたと強く記憶している。
 

                

その後大学に至るまでや大学に入ってからも湯川の随筆や対談など多くの出版物では、彼の物理の専門書は歯が立たなくても、それ以外はほとんど全部読んだ。特に「創造性」や「独創性」や「直感」に関する彼の哲学的発言には、他の内外のどの科学技術論者よりも最も強く影響を受けたと思う。
    

おかげで、将来何になりたいかなど特に考えることもなく「研究者」以外になりたいと思ったことはない。もちろん「自分が研究者に向いているだろうか」とか「研究者になるためにはどういう生活をしなければならないか」などの点については、在学中や助手になりたての時は真剣に悩んだ。
      

先日から強烈な風邪を引いているのでぼんやりとテレビを見ていたら、昨日の 超絶 凄ワザ! というNHKの番組で、「油が水ですぐ取れるまな板がほしい」という命題を出した小学生が、番組の最後に司会者から「君は将来何になりたいですか?」と問われて「研究者になりたいです」と明言していたのにはいささか感動した。子ども達にも一昔前のロマンチックな科学者像が再現してきはじめたのかもしれない。これは第一生命の調査通りにノーベル賞効果だと思ったことである。
   

  科学への投資は、将来の人材育成への投資でもあることは明らかである。過去20年間にわたって1%シーリングで国立大学の研究予算を減らし続けてどん底に落とし込み、逆に防衛予算を飛躍的に増やし、フィリピン、インドネシァ、ベトナムなどに桁違いの海外援助資金で国家予算をじゃぶじゃぶ散財し続けている安倍政権のやり方は、人材育成の面から国を内部崩壊させつつある。

    
   
      
 
(森敏)
2017-01-01 00:00 | カテゴリ:未分類

明けましておめでとうございます。 
     
  新春からえんぎでもないが、小生は最近もの忘れが非常に多くなってきた。顔は思い出してもその人の名前がどんどん頭から消えていく。高齢者が誰もが考えるように、特に脳の老化の進行を抑えたいと切実に思っている。親類にアルツハイマーで死亡した人物もいるので、なおさらである。単なるボケは一時的な記憶喪失であろうが、特にアルツは家族にばかりでなく、周囲の方々に、小生本人が自覚しないうちに、多大なる不快な思いをさせていることになるので、小生にとっては実に喫緊の課題である。

 

        と思って、最近送ってこられた日本農芸化学会の発刊する「化学と生物」をぱらぱらとめくっていたら、食品成分による脳老化改善・認知症予防の可能性 という総説が飛び込んできた。昔懐かしい生化学で習ったカルノシンやアンセリンなどという化合物の新しい機能として、認知症を遅らせる機能が発見されつつあるようで、実に慶賀の至りだと思う。

 

        以下ご参考までにあちこちから転載します。後期高齢者は必読かと。
   
1.
カルノシン と アンセリン の構造式 (:イミダゾールジペプチドと総称される)
     

カルノシン、アンセリンjpeg

 

2.

動物筋肉に多く含まれているカルノシンやアンセリンは、20世紀前半に発見されたジペプチドであるが、その研究は動物組織における分布や代謝に関するものが多かった。近年、これらは、様々な生体調節機能を有することが明らかとなってきた。わが国では、これからの高齢社会に向けて、カルノシンとアンセリンは、ヒトの健康維持に寄与する天然の機能性素材の1つとして非常に注目されている。(カルノシン・アンセリン研究会)

 

 

3.カルノシン

ヒトなどの哺乳類では、筋肉神経組織に高濃度に存在している。アヒルなどの一部の動物において N-メチルカルノシン (アンセリン)あるいはバレニンが多く見られる。生体内において酸化的ラジカル種のラジカルスカベンジャーとして働き、酸化的ストレスから保護しているといわれている。(Wikipedia)

 

 

4.アンセリン

哺乳類[1]骨格筋、および鳥類で見られるジペプチドであるヒスチジン基のイミダゾール環の酸解離定数pKa)は7.04であり、これが生理的pH水素イオン指数)の緩衝効果をもたらす[2](Wikipedia)

     

5.

「鶏肉には、高機能成分であるイミダゾールジペプチドがとても多く含まれている。特に、鶏胸肉には含有量が多く、100gあたり1gを越えるイミダゾールジペプチドが含まれている。このイミダゾールジペプチドには、筋肉の疲労を和らげる効果があることが知られていたが、筆者らが行った研究から脳老化に対しても改善効果があることがわかった。鶏胸肉は、高タンパク質で低脂肪であることから、生活習慣病が気になる高齢者にも、適した食材であると思われる。日々の食生活の中で、ほどよい頻度で鶏胸肉を摂取して頂くことを通じて、脳老化の改善が可能になると考えており、このことを証明する研究に、今後取り組みたいと思う。」{食品成分による脳老化改善・認知症予防の可能性}「化学と生物」2016年12月号)久恒辰博・東大新領域創成研究科准教授 の総説

 

 

  以上のように脳の老化の改善に、鶏の胸肉 が奨励されている。鳥肉は、ぱさぱさしてあまり小生の好みではないのだが、早速付近の安売り店で1kg購入してきたら、「こんなどこの産地かわからないものは料理しません」と家人にはけちょんけちょんだった。小生が大学に在職中にはイスラム圏からの留学生を引き受けたが、彼らは宗教上の理由と鶏肉が安価であることから、ほとんど毎食鶏肉を食べていた。統計を見たことはないのだが、案外モスレム圏の人たちにはアルツハイマーは少ないのかもしれない。是非疫学調査をして仮説を実証してもらいたいものだ。
     
  確かに、最近頻繁に鶏の胸肉を試食してみると、手羽肉と比べて胸肉は独特の粘っこいテクスチャーで、牛肉や豚肉のように、一度にあまりたくさん食べられるものではないようだ。その独特の風味こそがカルノシンやアンセリンによるものかもしれないが。胸肉をおいしくいただく調理法をホームページで勉強しなくっちゃ。しばらくは我慢して、舌が慣れるように、今年は人体実験してみようと思っている。何しろ酉年だから。

   

    


(森敏)
 
付記: そんなことテレビでガンガン紹介しているよ、と言われそうですが、小生自身はこの久恒辰博准教授の総説を読んでもっともらしいと思ったので、遅ればせながら紹介しました。


 
2016-11-01 01:52 | カテゴリ:未分類
以下の日テレのニュースで、「放射線像展」が報道されました。実に的確な報道です。ニュースを再現してご覧ください。
   

http://www.news24.jp/articles/2016/10/29/07345041.html

    
 放射能を特殊な技術で画像に…展示会を開催

20161029 16:20

 

放射能は目に見えないと言われているが、福島第一原発事故で放出された放射能を特殊な技術で画像にした展示会が、29日から埼玉県東松山市のギャラリー「COMEYA」で始まった。

 福島第一原発事故では、放射性セシウムなどが大量に放出され、現在も土壌や生物に蓄積されている。東京大学の森敏名誉教授とカメラマンの加賀谷雅道さんは、汚染した生き物や生活用品などを福島県などで採取し、オートラジオグラフィーという技術を使って可視化し、画像として展示している。

 画像からは植物が吸収した放射性物質が葉脈などを通って全体に広がる様子や、ヘビやカエルなどの生物の内臓に蓄積されている様子を見ることができる。また、横浜市内の屋内に置かれていた空気清浄器のフィルターからも放射能が検出され、事故直後、広い範囲に汚染が広がった実態がうかがわれる。

 展示会を主催したギャラリーは、子育てをしている母親らに、事故のことを忘れず放射能の現実を見てもらうため企画したと語っている。展示会は31日まで開催。
 

追記:以下はNHKの再放送のお知らせです。

今年3月に放映されたNHKスペシャル「被曝の森~原発事故5年目の記録~」

が下記の日程で深夜に再放送されることになりました。

2016118()午前200分~258分(7日深夜)

http://www6.nhk.or.jp/special/program/index.html



2016-10-20 15:58 | カテゴリ:未分類

佐賀高校寮生 
遥かなり十五畷 と記銘されている  旧制佐賀高校生像 佐賀大学本庄キャンパスにて
  
    
        100年の歴史を持つ日本土壌肥料学会が初めて佐賀大学で年次大会を開催した。小生にとって、1960年に大学受験に受かったときに、友人の親戚の経営する武雄温泉の宿にその友人とともに泊まった時以外に佐賀県に降り立ったことがなかったように記憶する。今回の1000人ばかりの学会参加者のどなたに聞いても、「佐賀に来たのは初めてです」という方が多かった。

     

泊まったホテルに観光案内の地図が置いてなかったのにまず驚いた。学会で入手した観光地図を見てみると、佐賀市内図では佐賀城跡公園周辺内外の数箇所のほかには名所旧跡がない。お城の方向にむかっている「唐人通り」というたぶんメインストリートが閉店シャッター街みたいになっていて人通りがほんとうに少ない。タクシーの運転手に聞くと郊外にショッピングモールができて、車でそこに皆さんは買い物に行き、場合によっては土日を過ごすのだそうである。相変わらずの最近の商店街凋落のパターンである。「佐賀名物の食べ物は何ですか?」と聞くと、「サー?」と考え込んで、「有明海がさっぱりだめになって、魚介類が提供できなくなりました。唐津のほうにはイカの刺身がありますが」ということであった。さっぱり観光立県発信の意欲がなさそうだ。

     

小生は最近足腰が弱ってきたので、健康維持のためにホテルから佐賀大学まで約2キロの距離の大通りを歩いて学会会期中3日間往復した。東京に比べて車が少なくてとても空気がさわやかできれいに感じられた。朝夕の人通りも実に閑散としている。初日の小生の学会発表の翌日の午後は日本土壌肥料学会賞受賞者などの講演が延々とあったのだが、会場の冷房が効きすぎて寒い上に、ひざ下からつま先までの足がしびれて「つる」ような感じがしてきたので、エコノミー症候群を恐れて、不謹慎とは思いながら早々に会場を出た。

     

外は暑い日ざしで、観光地図を見ながら、旧佐賀城に向かって歩いた。佐賀城内エリアには、佐賀城本丸歴史館、大隈記念館、徴古館、県立博物館、県立美術館があり、これらを早足で見学した。佐賀城本丸歴史館ではボランテイアの方が、30分でお願いしますとお願いしたのだが、流れるような説明で約1時間にわたって懇切丁寧な江戸時代の藩主鍋島家や長崎の出島に出入りしたシーボルトに関する話を歩きながらしてくれた。

      

別れ際に「ところで唐津の農民作家の山下惣一さんは「佐賀では出る杭は打たれる」とおっしゃっているそうですが、佐賀の県民性についてどう思われますか?」と聞いてみた。少し困った様子だったが、しばらく考えて「そうですね、佐賀の人は、人より先に前に出ずに、少し様子を見てから動き出すところがあるかもしれませんね」という実に慎重な応答だった。

      

次に訪れた「県立美術館」では古賀忠雄氏のすばらしい塑像や、洋画家岡田三郎助の人物画数点を初めてみた。見ていて非常にしっくりきたので、この岡田三郎助をより詳しく知りたいと思った。美術館出口のみやげ物店に佐賀偉人伝シリーズとして、鍋島直正、大隈重信、岡田三郎助、江藤新平,辰野金吾、平山醇左衛門、島義勇、大木喬任、佐野常民、納富介次郎、草葉川、副島種臣などの伝記がずらりと並べられていた。そこで岡田三郎助の伝記(松本誠一著)を購入した(電子書籍でも購入できるようである)。ホテルに帰って読んだら岡田三郎助は藤島武二、竹内栖鳳、横山大観とともに第一回文化勲章を受章しており、主として美人画の権威であることがわかり、これまであまり興味がなかった美人画の見方を多少教わった気がした。

      

佐賀県民が推薦すると思われる上記の人物のうち、小生が知っていた歴史上の人物は大隈重信、江藤新平、大木喬任、辰野金吾のみであり、実に己の不勉強を改めて知らされた。

      

次に、早稲田大学の創始者である大隈重信を記念する「大隈記念館」を訪れた。隣の大隈侯の生家の屋根が葦(よし)で葺き替えられている最中であった。

      

時代は人がつくる

人は学んでつくられる

絶えず学んで、絶えず行動せよ。

      

君たちも必ず失敗することがある。

打ちのめされても落ち込むな。

その失敗こそが大切なんだ。

      

世の中に価値のない人間などいない。

      

施したものに報いを求めるな!

施しを受けた恩を忘れるな!

      

という、大隈侯の生前の言葉が書かれた額縁などがあり、講演の録音が室内に流されていた。これらの言葉は早稲田大学の卒業生には「校是」として常識なんだろうと思われるが、改めて激動の明治維新をたくましく生き抜いてきた大隈侯の実体験からくる言葉と胸に重く受とめることができた。奇しくもこの2階には岡田三郎助が描いた凛とした黒を基調とした「大隈侯婦人像」(90cm x 60cm)が飾られていた。+

       

さてそこで本題に戻るのだが、佐賀県の短い滞在の中で、「小生の中で『なぜ佐賀県は印象が薄いのか』」について、ずっと考えていた。上記の人物たちの中で小生が一番詳しく知っているのは司馬遼太郎が描く江藤新平である。明治維新のフランス民法の立役者である江藤新平は、今ではその詳しい内容は忘れたが、明治政府から下野し、維新改革についていけなかった下級武士の代弁者として佐賀の乱を組織するが、なぜか大久保利通の徹底的な追跡であちこちを敗走したあげく土佐で捕獲されて、無残にも「さらし首の刑」を受けた。一方、大隈重信(総理大臣2)や大木喬任(第一回文部卿)などは、人物育成など文教行政に多大な貢献をした人物として名を成している。
         
  この江藤新平と大隈重信の違いはどこから来たのだろうか。私見では、明治維新改革直後での舵(かじ)取りの危うい明治政府創設期には、江藤新平のような「出る杭(くい)」は、大久保利通にとって、とても厄介で、類似の不満分子の蜂起が全国に髣髴として起こることを警戒して、徹底的に打ちのめさなければならない見せしめの対象であったに違いない。
        
  佐賀県民はこのことを骨の髄まで知っているのかもしれない-このことがすなわち「出る杭になるな」、という県民性に影響したのではないだろうか? などと勝手な妄想をしてみた。(こんな仮説をとなえるとたぶん数多(あまた)の反論がきて、袋叩きに会うに違いないのだが。。。)

              

帰りの佐賀空港では、いまや有明海の希少資源になりつつある「むつごろう」2匹の甘露煮(500円)を2袋、孫のお土産に買った。

           


(森敏)
追記:世界気球大会 が10月28日から11月6日まで佐賀で開催されている。多くのスポンサー企業が付いているようだ。強風で本日(11月1日)は中止だとか。地元では一年かけて準備してきた行事だから成功を祈りたい。「唐人通り」にこの気球関連の事務所があったのを覚えている。
2016-10-04 17:25 | カテゴリ:未分類

【大隅良典さんノーベル医学・生理学賞受賞】快挙に中韓ビックリ 韓国「オタク文化」例に「日本に学ばねば」 中国「どんな秘密があるのか…」大隅良典・東京工業大栄誉教授(71)がノーベル医学・生理学賞を受賞したニュースは、APやロイターなど海外の通信社も速報した。
   

 韓国の聯合ニュースは、自然科学分野で日本人のノーベル賞受賞が相次ぐ背景として、「日本特有の匠(たくみ)の精神」や一つの分野に没頭する「オタク文化」の存在を挙げ、「政策や文化といったさまざまな側面の結晶だといえる」と分析した。韓国ではこの分野で受賞がないことから、「日本の政策に学ばねばならない」という韓国の研究者の意見も伝えた。

 中国では北京紙、新京報(電子版)が大隅氏の受賞を報じた上で、「ここ数年、日本の科学者によるノーベル賞受賞が続出している。どんな秘密があるのだろうか」とした。

 英BBCテレビ(同)は「大隅氏の業績はがんからパーキンソン病にいたるまで、何が病気を悪化させるかを説明する助けになった」と重要性を強調。米CNNテレビ(同)は、「オートファジーの存在は1960年代から認識されていたが、大隅氏が酵母を用いた先駆的な実験を行うまで、仕組みがほとんど解明されていなかった」と伝えた。

    

 
  きわめて専門的になりますが、以下に学士院賞受賞時と京都賞受賞時の大隅良典先生の研究内容と、国際賞受賞時の挨拶、をホームページから転記しておきました。
   

     

日本学士院賞審査要旨(2006)
  

理学博士大隅良典氏の「オートファジーの分子機構と生理機能の研究」に対する賞審査要旨
 

分子生物学では、セントラルドグマ確立以来、遺伝子発現すなわちタンパク質の「合成」のしくみの解明に多くの努力が割かれ、タンパク質の「分解」の問題は、受動的でそれほど大きな生物学的な意味を持たないのではないかと長らく考えられてきた。しかし近年、生命が持つ遺伝子の相当な部分がタンパク質やその複合体の分解に関わっており、分解も、合成に匹敵するほど大切であることが認識されつつある。生命が絶えざる合成と分解のバランスの上に成り立っていることから考えればむしろ当然のことであろう。五〇数年前に細胞内小器官「リソソーム」が発見されて以来、タンパク質の分解はこのコンパートメントの中で行われていると一般的に考えられてきた。しかし現在では、細胞内タンパク質分解は、ユビキチン/プロテアソーム系とリソソーム系の二つに大別することができ、両者が機能分担を行っていることが明確になっている。前者が厳密な識別に基づく選択性の高い分解であるのに対し、後者はむしろ非選択的でバルクな(大量な)分解を担っている。

リソソーム内に分解基質を送る過程は、自己を食すると言う意味の「オートファジー」とよばれる膜現象からなることが示されてきた。しかし様々な困難からその分子機構は全くの謎であった。大隅氏は、酵母細胞が栄養飢餓条件にさらされると、リソソームと相同な分解コンパートメントである「液胞」で大規模なタンパク質分解が誘導されることを顕微鏡観察によって発見した。そして、その後の電子顕微鏡による解析から、これが高等生物で知られていたオートファジーと同一の膜現象であることを証明した。次に、酵母の系の優位性を生かして遺伝学的な解析に取り組み、オートファジーに欠損を持つ多くの変異株を分離し、一四個の関連遺伝子(ATG遺伝子群)を同定することに成功した。その後に発見されたオートファ

ジーに必須の遺伝子が三個のみであることから、大隅氏らの当初の戦略が極めて優れていたことが窺える。大隅氏は、引き続き、ATG遺伝子群のクローニングに着手し、それらがコードするタンパク質(Atgタンパク質群)を同定したが、ほぼ全てが新しい分子で、それらの機能の推定は困難であった。しかし数年の間に大隅研究室ではこれらAtgタンパク質に関する重要な発見がなされた。(1)Atg12がユビキチン様タンパク質で、二つの酵素Atg7Atg10を介してAtg5と共有結合体を形成する。(2)Atg8もユビキチン様タンパク質で、Atg7により活性化された後、Atg3に転移し、膜リン脂質の一つホスファチジルエタノールアミンと結合する。(3)Atg1はタンパク質キナーゼ活性を有し、この活性がオートファジーに必須であること、(4)Atg14は、オートファジーに必要な特異的PI3キナーゼと複合体を形成すること、などである。また、栄養飢餓の関知にTorと呼ばれるキナーゼが関わることも明らかにした(mTORは動物栄養センシングに関連して注目されている)。オートファジーの最大の謎は細胞質の一部やオルガネラ

をまず膜が取り囲んで隔離する膜現象にある。上記の反応系は全てこの過程(オートファゴソーム形成)に関わっている。オートファジーは真核細胞の基本的な機能の一つであり、発見されたATG遺伝子群は酵

母からヒト、高等植物にまで広く保存されていることが明らかとなった。これらの機能解明は、オートファジーの機構解明に留まらず、細胞内の膜動態の分子機構を理解する上でも重要な知見を与えると

期待されている。オートファジーには未だ多くの謎が隠されているが、大隅氏らによるATG遺伝子群の同定を契機として、多くの生物種でオートファジーが確認され、また、タンパク質分解の破綻が様々な病気や老化などにも関わっていることが明らかになってきた。現代の人間社会には資源のリサイクルシステムの構築が求められているが、細胞は自らのタンパク質を分解して必要なタンパク質を合成するという見事

なリサイクルシステムを獲得したものと考えられる。オートファジーの重要性は、今後も、細胞内有害物質の除去機構、細菌感染、抗原提示、老化など様々な形で明らかにされるであろう。このように本研究分野の活性がいっそう高まる中、大隅氏は一貫してオートファジーの分子機構の解明に正面から取り組んでおり、他の追随を全く許さない研究を続けている。また、大隅氏は、Gordon Research Conferenceなど主要な国際会議から基調講演に招かれ、本分野における国際的なリーダーシップを発揮しており、平成一七年には藤原賞を受賞している。

   

  
 

 

京都賞の受賞理由
     

細胞の環境適応システム、オートファジーの分子機構と生理的意義の解明への多大な貢献
     

大隅良典博士は、細胞が栄養環境などに適応して自らタンパク質分解を行うオートファジー(自食作用)に関して、酵母を用いた細胞遺伝学的な研究を進め、世界をリードする成果をあげた。オートファジーは、1960年初頭に、動物細胞内の食胞として知られているリソソーム中に細胞質成分であるミトコンドリアや小胞体が一重膜で囲まれて存在していることから提唱された概念で、細胞内成分や細胞内小器官がリソソームに取り込まれて分解を受ける過程を意味する。その後、多種類の細胞やいくつかの臓器でこの現象が報告されてきたが、オートファジーの分子メカニズムや生理的意義は不明なままであった。大隅博士は、出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeで空胞の機能を研究していたが、1992年、タンパク質分解酵素B欠損株を低栄養培地に曝すことにより空胞中に一重膜で囲まれた細胞内小器官成分が出現すること、即ち、酵母でオートファジーが誘導できることを発見した。同博士は、ついで上記現象を利用して、タンパク質分解抑制と栄養飢餓によってもオートファジーが誘導されない多数の変異株を同定した。博士の酵母におけるオートファジーと変異株の発見は、オートファジーの分子機構解析に道を拓いたものである。これが基盤となり、これまでオートファジーに関係する数十の分子が同定され、これらの機能解析により、飢餓などの刺激に応じて、どのようにして細胞内成分や細胞内小器官を囲む新規の膜構造が形成され、これがリソソームに融合するかの道筋が明らかになりつつある。

酵母におけるオートファジー関連分子の発見は、哺乳類を含む動物細胞でのオートファジー関連分子の同定につながり、これらを利用して、動物におけるオートファジーの多様な生理的意義が多くの研究者により明らかにされた。すなわち、オートファジーが出生に伴う飢餓状態への適応に不可欠であること、オートファジーが神経での異常タンパク質の蓄積を防ぎ神経細胞死を防止するために必要であること、心臓の収縮力を維持するためにオートファジーを伴う代謝回転が不可欠であることなどがある。

大隅博士の貢献は、生体の重要な素過程の細胞自食作用であるオートファジーに関してその分子メカニズムと生理的意義の解明に道を拓いたものとして高く評価されるものである。

以上の理由によって、大隅良典博士に基礎科学部門における第28(2012)京都賞を贈呈する。

    
 
 

 国際生物学会賞での挨拶(2015)
 

(一部略)

私はこれまで機会あるごとに述べて参りましたが、私自身、様々な偶然と出会いに助けられて、研究者としての細い細い道を今日まで歩んで参りました。東京大学教養学部の今堀和友先生の下で学び、京都大学、東京大学農学部、ロックフェラー大学留学を経て、東京大学理学部安楽泰宏教授のもとで研究をする機会を得ました。その後、東京大学教養学部、基礎生物学研究所にお世話になり、現在も、東京工業大学で大変恵まれた環境を頂いて研究を続けています。今日科学研究は激烈な競争があるというのも事実ですが、私は元来競争が苦手で、人のやらないことをやりたいという思いで研究を進めて参りました。

   
私は細胞内のタンパク質の分解の機構に興味を持ち、1988年以来28年間に亘ってオートファジーと呼ばれる細胞内の分解機構の研究を進めて参りました。生命体は絶えまない合成と分解の平衡によって維持されています。合成に比べて分解の研究は興味を持たれず、なかなか進みませんでした。

   
私は一貫して小さな酵母という細胞を用いて、オートファジーの謎の解明を目指し、関わる遺伝子群とその機能を解析して参りました。オートファジーに関わる遺伝子の同定を契機として、今日オートファジーの研究は劇的な広がりを見せ、高等動植物の様々な高次機能に関わっていること、そして、様々な病態にも関係していることが次々と明らかになって参りました。すなわち、分解は合成に劣らず生命活動には重要であるということが次第に認識されて参りました。しかし、まだオートファジーの研究には沢山の基本的な課題が残されています。私は残された研究時間で今一度原点にたちかえって、「オートファジーは何か」ということに向かいたいと思っています。また、近い将来オートファジーのさらなる機構の解明が進み、細胞の一層の理解のもとに、病気の克服や健康の増進などの研究がさらに進むことを心から願っています。

   
いうまでもなく現代生物学は一人で進められるものではありません。私のこれまでの仕事も、30年近くに亘る沢山の素晴らしい研究仲間のたゆまぬ努力の賜物でもあります。また素晴らしい共同研究者にも恵まれました。心から彼らに感謝の意を表するとともに、彼らとともにこの栄誉を分かち合いたいと思っております。
   
これまで私を支えてくれた今は亡き両親、妻萬里子と家族にも心から感謝をしたいと思います。

最後にこれから生物学を志す若い世代に向けて、
   
私達の周りには、まだ沢山の未知の課題が隠されています。素直に自分の眼で現象をみつめ、自分の抱いた疑問を大切にして、流行や様々な外圧に押し流されることなく、自分を信じて生命の論理を明らかにする道を進んで欲しいと申しあげたいと思います。
   
私も微力ながら残された時間を、効率や性急に成果が求められる今日の研究者を巡る状況が少しでも改善し、生き物や自然を愛し、人を愛し、豊かな気持ちで研究ができる環境というものの実現に助力したいと思います。
本日はどうも有り難うございました。

       
      


       
  大隅先生ご自身が選んでいる主要な業績は以下のとおりです。
  

01. Takeshige, K., Baba, M., Tsuboi, S., Noda, T., and Ohsumi, Y. (1992)

Autophagy in yeast demonstrated with proteinase-deficient mutant and its

conditions for induction. J. Cell Biol., 119, 301-311.

02. Tsukada, M., and Ohsumi, Y. (1993) Isolation and characterization of

autophagy-deficient mutants in Saccharomyces cerevisiae. FEBS Lett.,

333, 169-174.

03. Baba, M., Takeshige, K., Baba, N., and Ohsumi, Y. (1994) Ultrastructural

analysis of the autophagic process in yeast: Detection of autophagosomes

and their characterization. J. Cell Biol., 124, 903-913.

04. Matsuura, A., Tsukada, M., Wada, Y., and Ohsumi, Y. (1997) Apg1p, a

novel protein kinase required for the autophagic process in Saccharomyces

cerevisiae. Gene, 192, 245-250.

05. Baba, M., Ohsumi, M., Scott, S. V., Klionsky, D. J., and Ohsumi, Y. (1997)

Two distinct pathways for targeting proteins from the cytoplasm to the

vacuole/lysosome. J. Cell Biol., 139, 1687-1695.

06. Mizushima, N., Noda, T., Yoshimori, T., Tanaka, T., Ishii, T., George, M.

D., Klionsky, D. J., Ohsumi, M., and Ohsumi, Y. (1998) A protein

conjugation system essential for autophagy. Nature, 395, 395-398.

07. Mizushima, N., Noda, T., and Ohsumi, Y. (1999) Apg16p is required for

the function of the Apg12p-Apg5p conjugate in the yeast autophagic

pathway. EMBO J., 18, 3888-3896.

08. Kirisako, T., Baba, M., Ishihara, N., Miyazawa, K., Ohsumi, M., Noda, T.,

and Ohsumi, Y. (1999) Formation process of autophagosome is traced

with Apg8/Aut7p in yeast. J. Cell Biol., 147, 435-446.

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(森敏)

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