- 2022/09/16 : 日本土壌肥料学会に参加した:余話
- 2022/09/15 : 肥料・食料・原発でグテーレスがプーチンに翻弄されている
- 2022/09/10 : 「活性汚泥」の活用はよいが、慎重に
- 2022/08/22 : 放射性セシウムや放射性ヨウ素に関する19の研究課題の紹介
- 2022/08/05 : ザポリッジャ原発 暴発の危機が迫っている
WINEPブログ
「飯舘村のカエルの放射能汚染」
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2022-09-16 16:06 |
カテゴリ:未分類
日本土壌肥料学会に9月12日から15日の3日間とも参加できた。と言っても、全部午後のプログラムだけであった。
なぜかというに、毎日学会は9時から始まるのだが、自宅から会場の東京農業大学まで約1時間半かかるので、午前7時半に家を出なければならず、その時間帯は、地下鉄丸ノ内線(本郷三丁目発)と地下鉄千代田線・小田急線(経堂着)が通勤客で超満員だからである。
満員だから、老人にはまだ収束していない「中共コロナ」発症後のいまだに長引く汚染が怖いからでもある。
それよりも前にほかの理由もあった。実は学会の2週間前に実に2年ぶりに「腰痛」になり、歩けなくなったので、これでは今年の学会参加はダメかなと思っていた。いつもはだいたい腰痛発症1週間後で我慢して杖を突いて歩けるようになるのだが、学会開催2日前になっても、足腰に違和感があり、いよいよダメかとあきらめかけた。
9月12日(火)になって、杖を突いて歩いてみると、ゆっくりなら歩けそうだったので、途中でダメなら引き返すつもりで、自宅を出た。
小田急経堂駅について、実に久しぶりに東京農大に向かった。農大通り商店街は、以前よりも活気があるように思えた。学会のプログラムには経堂駅から農大キャンパス「経堂門」までは「徒歩15分」と書かれていたのだが、これが少し上り勾配があるうえに、道が自動車などで混んでいて、ずいぶんと難儀した。杖を突きながらなので20分以上かかった。しかも30度C以上の炎天下である。
「経堂門」を入ると、グランドは見覚えがあるのだが、建物があちこち立っていて、20年前と比べて見違える変容を見せていた。心なしか、構内で会う学生たちも、ネームプレートを付けた教職員たちも、礼儀正しくて以前よりも活気があるように見えた。
会場では、ポスター展示会場を見て回った。ほとんどの学会参加者が口頭発表の聴講に参加している時間帯なので、ポスター発表会場には2-3人しかいなかった。なので、実にゆっくり見られた。いつもと異なるのは、ポスターとポスターの間隔がコロナ対策の為か一つ分ずつ抜かしてあることだった。これはちょっと面白い光景だと思った。ポスターを見たら疲れたので帰りの通勤客で込まないように4時に大学を出て帰宅した。
これを2日めも繰り返した。
学会3日目は、シンポジウムが組まれており、小生は「地球温暖化に対処する土壌肥料学」という一般公開シンポジウムを東京農大百周年記念講堂で拝聴した。
会場では開始される前に、旧知に会う人ごとに「お元気そうですね」といわれるので「いや腰痛で杖を突いています、年が年なので明日死ぬかもしれませんので、来年の学会では会えないかもしれないので別れの握手しましょう」とコロナであることを忘れて手を差し伸べてきた。これに対しては、手を慌てて引っ込めた御仁もいた。「森先生はいつ会っても“明日にも死にそう”なことを言って、もう20年にもなりますね」とまじめに受け取らずに冷やかす教え子もいた。
シンポジウムの講演内容はいずれもなかなか刺激的で大いに勉強になった。ここでは記さないが、考えさせられるところが多かった。長く座っていたので尻が痛く、足がしびれてきて危険を感じたので、最後の「討論会」には参加できずに杖を突きながらこっそりと退散した。
参考までにシンポジウムのテーマを記しておきます。(各演者一人30分の講演時間でした)
温暖化にも関わる窒素問題 食と土壌と窒素の深い関係
林 健太郎(農業・食品産業技術総合研究機構/総合地球環境学研究所)
土壌炭素貯留と気候変動緩和・適応策 ~土壌炭素は地球を救う!~
中島 亨(東京農業大学地域環境科学部)
農業における土壌炭素蓄積と温室効果ガス排出抑制に関する技術と土づくり
加藤 拓(東京農業大学応用生物科学部)
低炭素社会の実現を目指した土壌生物研究
妹尾 啓史(東京大学農学生命科学研究科)
植物の栄養研究はどう温暖化に貢献できるのか
藤原 徹(東京大学農学生命科学研究科)
(森敏)
追記:講演会の目的を要約すれば
1.温室効果ガスであるCO2(炭酸ガス)を「土壌に貯留する」技術を開発すること。
2.CO2の数十倍の温室効果があるN2O(一酸化窒素)やメタンガス(CH4)を「土壌から発生させない」ための技術を開発すること。
なぜかというに、毎日学会は9時から始まるのだが、自宅から会場の東京農業大学まで約1時間半かかるので、午前7時半に家を出なければならず、その時間帯は、地下鉄丸ノ内線(本郷三丁目発)と地下鉄千代田線・小田急線(経堂着)が通勤客で超満員だからである。
満員だから、老人にはまだ収束していない「中共コロナ」発症後のいまだに長引く汚染が怖いからでもある。
それよりも前にほかの理由もあった。実は学会の2週間前に実に2年ぶりに「腰痛」になり、歩けなくなったので、これでは今年の学会参加はダメかなと思っていた。いつもはだいたい腰痛発症1週間後で我慢して杖を突いて歩けるようになるのだが、学会開催2日前になっても、足腰に違和感があり、いよいよダメかとあきらめかけた。
9月12日(火)になって、杖を突いて歩いてみると、ゆっくりなら歩けそうだったので、途中でダメなら引き返すつもりで、自宅を出た。
小田急経堂駅について、実に久しぶりに東京農大に向かった。農大通り商店街は、以前よりも活気があるように思えた。学会のプログラムには経堂駅から農大キャンパス「経堂門」までは「徒歩15分」と書かれていたのだが、これが少し上り勾配があるうえに、道が自動車などで混んでいて、ずいぶんと難儀した。杖を突きながらなので20分以上かかった。しかも30度C以上の炎天下である。
「経堂門」を入ると、グランドは見覚えがあるのだが、建物があちこち立っていて、20年前と比べて見違える変容を見せていた。心なしか、構内で会う学生たちも、ネームプレートを付けた教職員たちも、礼儀正しくて以前よりも活気があるように見えた。
会場では、ポスター展示会場を見て回った。ほとんどの学会参加者が口頭発表の聴講に参加している時間帯なので、ポスター発表会場には2-3人しかいなかった。なので、実にゆっくり見られた。いつもと異なるのは、ポスターとポスターの間隔がコロナ対策の為か一つ分ずつ抜かしてあることだった。これはちょっと面白い光景だと思った。ポスターを見たら疲れたので帰りの通勤客で込まないように4時に大学を出て帰宅した。
これを2日めも繰り返した。
学会3日目は、シンポジウムが組まれており、小生は「地球温暖化に対処する土壌肥料学」という一般公開シンポジウムを東京農大百周年記念講堂で拝聴した。
会場では開始される前に、旧知に会う人ごとに「お元気そうですね」といわれるので「いや腰痛で杖を突いています、年が年なので明日死ぬかもしれませんので、来年の学会では会えないかもしれないので別れの握手しましょう」とコロナであることを忘れて手を差し伸べてきた。これに対しては、手を慌てて引っ込めた御仁もいた。「森先生はいつ会っても“明日にも死にそう”なことを言って、もう20年にもなりますね」とまじめに受け取らずに冷やかす教え子もいた。
シンポジウムの講演内容はいずれもなかなか刺激的で大いに勉強になった。ここでは記さないが、考えさせられるところが多かった。長く座っていたので尻が痛く、足がしびれてきて危険を感じたので、最後の「討論会」には参加できずに杖を突きながらこっそりと退散した。
参考までにシンポジウムのテーマを記しておきます。(各演者一人30分の講演時間でした)
温暖化にも関わる窒素問題 食と土壌と窒素の深い関係
林 健太郎(農業・食品産業技術総合研究機構/総合地球環境学研究所)
土壌炭素貯留と気候変動緩和・適応策 ~土壌炭素は地球を救う!~
中島 亨(東京農業大学地域環境科学部)
農業における土壌炭素蓄積と温室効果ガス排出抑制に関する技術と土づくり
加藤 拓(東京農業大学応用生物科学部)
低炭素社会の実現を目指した土壌生物研究
妹尾 啓史(東京大学農学生命科学研究科)
植物の栄養研究はどう温暖化に貢献できるのか
藤原 徹(東京大学農学生命科学研究科)
(森敏)
追記:講演会の目的を要約すれば
1.温室効果ガスであるCO2(炭酸ガス)を「土壌に貯留する」技術を開発すること。
2.CO2の数十倍の温室効果があるN2O(一酸化窒素)やメタンガス(CH4)を「土壌から発生させない」ための技術を開発すること。
2022-09-15 10:01 |
カテゴリ:未分類
日本はロシアから塩化カリ(KCl)を総輸入量の約16%を調達している。これは今完全にストップしているので、ケイ酸カリなどの値段を上げざるを得ないと、現在東京農業大学で開かれている日本土壌肥料学会の展示ブースでの業者が言っていた。塩化カリの日本への主要な輸入調達先はカナダの59%である。
また中華人民共和国からは「リン酸アンモニウム」の総輸入量の90%を、「尿素」の37%を中華人民共和国から輸入している。これも習近平が最近輸出を抑えているので、これらの窒素肥料が足りなくて日本の肥料業界はてんやわんやのようである。
だから、岸田首相は下水汚泥の肥料化の加速を次年度の方針として打ち出しているのだ。日本で年間に生産される下水汚泥の12%ぐらいしか肥料や土壌改良材などに使用されているに過ぎない。下水汚泥の中には窒素とリンが多量に含まれているからこの有効利用は喫緊の課題なのである。
以下は、肥料、食料、原発で狂犬プーチンに国連のグテーレス総長はバカにされて、言を左右にほんろうされているが、マーよく耐えているよね。
国連総長、プーチン氏と会談 ロシア産肥料輸出後押しへ
2022/09/15 03:34
[国連 14日 ロイター] - 国連のグテレス事務総長は14日、ロシアのプーチン大統領と電話会談し、国連とトルコが仲介したウクライナ産穀物輸出再開の合意が維持され、ロシアから肥料の主要原料であるアンモニアの輸出が再開されることに期待を表明した。
グテレス事務総長は会談後記者団に対し「ロシア産肥料の輸出に絡み依然存在する障害を取り除くことが絶対に不可欠だ」と述べた。
7月に実現したウクライナ産穀物輸出再開の合意では、ロシアからの食料・肥料輸出を促すことも柱となっていたが、ロシアは最近、自国からの輸出が依然妨げられているなどとして合意に不満を示している。
グテレス事務総長は「黒海経由でロシア産アンモニア輸出の可能性を巡り協議が行われている」と明らかにした上で、ロシアの港からロシア産の食料や肥料が輸出されているものの、「望ましく、必要とされる規模をはるかに下回る」と述べた。
さらに「肥料市場が逼迫するリスクが存在する」と警告。「世界各地から耕作地が縮小しているという情報が伝えられており、2022年に食料が不足するリスクを意味する」と述べた。
また、穀物や肥料の輸出再開合意は現時点で奏功しているものの、ウクライナでの戦争の終結には「まだ遠い」という認識も示した。
ロシア政府によると、プーチン大統領はグテレス氏に対し、ロシア軍が占拠するウクライナ南部のザポロジエ原子力発電所について、国際原子力機関(IAEA)の査察団との「建設的」な協力を歓迎すると伝えた。
また中華人民共和国からは「リン酸アンモニウム」の総輸入量の90%を、「尿素」の37%を中華人民共和国から輸入している。これも習近平が最近輸出を抑えているので、これらの窒素肥料が足りなくて日本の肥料業界はてんやわんやのようである。
だから、岸田首相は下水汚泥の肥料化の加速を次年度の方針として打ち出しているのだ。日本で年間に生産される下水汚泥の12%ぐらいしか肥料や土壌改良材などに使用されているに過ぎない。下水汚泥の中には窒素とリンが多量に含まれているからこの有効利用は喫緊の課題なのである。
以下は、肥料、食料、原発で狂犬プーチンに国連のグテーレス総長はバカにされて、言を左右にほんろうされているが、マーよく耐えているよね。
国連総長、プーチン氏と会談 ロシア産肥料輸出後押しへ
2022/09/15 03:34
[国連 14日 ロイター] - 国連のグテレス事務総長は14日、ロシアのプーチン大統領と電話会談し、国連とトルコが仲介したウクライナ産穀物輸出再開の合意が維持され、ロシアから肥料の主要原料であるアンモニアの輸出が再開されることに期待を表明した。
グテレス事務総長は会談後記者団に対し「ロシア産肥料の輸出に絡み依然存在する障害を取り除くことが絶対に不可欠だ」と述べた。
7月に実現したウクライナ産穀物輸出再開の合意では、ロシアからの食料・肥料輸出を促すことも柱となっていたが、ロシアは最近、自国からの輸出が依然妨げられているなどとして合意に不満を示している。
グテレス事務総長は「黒海経由でロシア産アンモニア輸出の可能性を巡り協議が行われている」と明らかにした上で、ロシアの港からロシア産の食料や肥料が輸出されているものの、「望ましく、必要とされる規模をはるかに下回る」と述べた。
さらに「肥料市場が逼迫するリスクが存在する」と警告。「世界各地から耕作地が縮小しているという情報が伝えられており、2022年に食料が不足するリスクを意味する」と述べた。
また、穀物や肥料の輸出再開合意は現時点で奏功しているものの、ウクライナでの戦争の終結には「まだ遠い」という認識も示した。
ロシア政府によると、プーチン大統領はグテレス氏に対し、ロシア軍が占拠するウクライナ南部のザポロジエ原子力発電所について、国際原子力機関(IAEA)の査察団との「建設的」な協力を歓迎すると伝えた。
2022-09-10 14:02 |
カテゴリ:未分類
下水汚泥資源「利用拡大を」 首相指示、化学肥料高騰で「国産化」
2022年9月10日 9時00分(朝日新聞)
岸田文雄首相は9日、化学肥料の高騰に対応するため、「下水汚泥」など国内資源の利用を拡大するよう農林水産省に指示した。同省は、秋にも見込まれる補正予算案に盛り込むことを視野に具体策をまとめる。
食料安全保障などについて議論する「食料安定供給・農林水産業基盤強化本部」の初会合が首相官邸で開かれ、岸田氏は「下水汚泥など未利用資源の利用拡大により、肥料の安定供給を図ること」と述べた。
人のし尿など、下水にはリン…
ウクライナ戦争でロシアが化学肥料の輸出に制限をかけ、石油や天然ガスなどの流通の不安定さから、輸送費用が高騰し、日本への輸入化学肥料の値段が高騰しているようだ。
これでは日本の稲作や畑作農業、園芸、畜産業はやっていけない、ということで、政府が活性汚泥の活用に本腰を入れ始めるようだ。
活性汚泥は平たく言えば我々人間の糞尿が主体である。1960-70年代に公害問題が活発な頃、企業や自治体や個人が無処理の下水を河川に放流していたので赤潮などが発生して、日本の河川と沿岸は臭気ふんぷんたるものがあった。その後環境庁が出来て、河川の富栄養化を阻止するために活性汚泥処理場からのリンや窒素などの排水基準値が厳格化され、活性汚泥の菌体が毎日大量に回収されている。
この活性汚泥が家畜糞尿未熟堆肥と一緒に混合されて好熱菌などの投入で発酵されて、衛生的で有用な堆肥として自治体では他の民間肥料と競合しない値段で販売し活用されているところもある。
下水汚泥の用途は多岐にわたる。このことは以下の下水道事業団のホームページに詳しい。
https://www.jswa.jp/recycle/data/
今回の岸田首相の方針は活性汚泥を肥料用の利用資源として従来よりも加速化しようというものである。
しかし農水省のホームページに詳しいが、活性汚泥堆肥の最大の問題は、その中に含まれる重金属の濃度である。とりわけカドミウム(Cd)が最も問題になる重金属である。
活性汚泥堆肥を土壌に連用すると、微量の重金属などが植物に吸収されて我々の口に入るのだが、同時に作物によって吸収されなかったものは間違いなく土壌に徐々に蓄積していくのである。そこで農水省は汚泥中のCd含有量の上限を 5ppm と定めている。
最近は上水道の鉄管や下水道の排水管をプラスチック管に変えたりしているので、昔のように重金属が溶けだしてくることがなくなっているかもしれないが、日本全域がそうなっているのではなく、まだまだ自治体においては配管改修過程と思われるので、この活性汚泥の重金属汚染問題は自治体によっては現在も続いているはずである。
また、このWINEPブログでも、かつて東電福島第一原発爆発問題の時に、しつこく統計をあつかったことがあるが、全国の活性汚泥の中には、バセドー病などの医療用に使われた放射性ヨード(I-131)が病院の排水に含まれている場合が多いので、使用には注意を要する。このような病院の排水系の末端にある下水処理場の汚泥は、いまでも病院によっては厚生省の排水基準を守らずに排出されて活性汚泥の中に放射性ヨードが汚染されていると考えられる。だから、この汚泥を使った堆肥の場合は、I-131の半減期(8.04日)の少なくとも10倍以上の時間をかけたの減衰後に使用すべきと思う。
以下の福島の下水処理場での活性汚泥中の131-I含量の推移グラフを参照してください。
放射能は降り続けているのだろうか?連載(6ー1):2014-2015年の県中浄化センターの脱水汚泥中の 131I、137Cs、降雨量の推移について再検討する
(森敏)
2022年9月10日 9時00分(朝日新聞)
岸田文雄首相は9日、化学肥料の高騰に対応するため、「下水汚泥」など国内資源の利用を拡大するよう農林水産省に指示した。同省は、秋にも見込まれる補正予算案に盛り込むことを視野に具体策をまとめる。
食料安全保障などについて議論する「食料安定供給・農林水産業基盤強化本部」の初会合が首相官邸で開かれ、岸田氏は「下水汚泥など未利用資源の利用拡大により、肥料の安定供給を図ること」と述べた。
人のし尿など、下水にはリン…
ウクライナ戦争でロシアが化学肥料の輸出に制限をかけ、石油や天然ガスなどの流通の不安定さから、輸送費用が高騰し、日本への輸入化学肥料の値段が高騰しているようだ。
これでは日本の稲作や畑作農業、園芸、畜産業はやっていけない、ということで、政府が活性汚泥の活用に本腰を入れ始めるようだ。
活性汚泥は平たく言えば我々人間の糞尿が主体である。1960-70年代に公害問題が活発な頃、企業や自治体や個人が無処理の下水を河川に放流していたので赤潮などが発生して、日本の河川と沿岸は臭気ふんぷんたるものがあった。その後環境庁が出来て、河川の富栄養化を阻止するために活性汚泥処理場からのリンや窒素などの排水基準値が厳格化され、活性汚泥の菌体が毎日大量に回収されている。
この活性汚泥が家畜糞尿未熟堆肥と一緒に混合されて好熱菌などの投入で発酵されて、衛生的で有用な堆肥として自治体では他の民間肥料と競合しない値段で販売し活用されているところもある。
下水汚泥の用途は多岐にわたる。このことは以下の下水道事業団のホームページに詳しい。
https://www.jswa.jp/recycle/data/
今回の岸田首相の方針は活性汚泥を肥料用の利用資源として従来よりも加速化しようというものである。
しかし農水省のホームページに詳しいが、活性汚泥堆肥の最大の問題は、その中に含まれる重金属の濃度である。とりわけカドミウム(Cd)が最も問題になる重金属である。
活性汚泥堆肥を土壌に連用すると、微量の重金属などが植物に吸収されて我々の口に入るのだが、同時に作物によって吸収されなかったものは間違いなく土壌に徐々に蓄積していくのである。そこで農水省は汚泥中のCd含有量の上限を 5ppm と定めている。
最近は上水道の鉄管や下水道の排水管をプラスチック管に変えたりしているので、昔のように重金属が溶けだしてくることがなくなっているかもしれないが、日本全域がそうなっているのではなく、まだまだ自治体においては配管改修過程と思われるので、この活性汚泥の重金属汚染問題は自治体によっては現在も続いているはずである。
また、このWINEPブログでも、かつて東電福島第一原発爆発問題の時に、しつこく統計をあつかったことがあるが、全国の活性汚泥の中には、バセドー病などの医療用に使われた放射性ヨード(I-131)が病院の排水に含まれている場合が多いので、使用には注意を要する。このような病院の排水系の末端にある下水処理場の汚泥は、いまでも病院によっては厚生省の排水基準を守らずに排出されて活性汚泥の中に放射性ヨードが汚染されていると考えられる。だから、この汚泥を使った堆肥の場合は、I-131の半減期(8.04日)の少なくとも10倍以上の時間をかけたの減衰後に使用すべきと思う。
以下の福島の下水処理場での活性汚泥中の131-I含量の推移グラフを参照してください。
放射能は降り続けているのだろうか?連載(6ー1):2014-2015年の県中浄化センターの脱水汚泥中の 131I、137Cs、降雨量の推移について再検討する
(森敏)
2022-08-22 11:47 |
カテゴリ:未分類
以下は来る9月13日から14日まで東京農業大学で開催される日本土壌肥料学会での約400の講演題目から、放射性セシウムや放射性ヨウ素に関する19の研究課題を抜き出し紹介したものです。(発表者名は筆頭と最後尾のみ記載しています)
東電福島第一原発事故以降10年以上経過した今も基礎から応用に至るまで放射能による農地汚染の研究が続いています。
奇しくも現在ウクライナのザポロジエ原発がロシア軍の占領で大惨事を起こすの危機に陥っています。事故後の農地汚染の後始末はいつも農民や農学者に放り投げられてきました。絶対にそんな事態が起こらないように切に祈りたい。
放射性セシウム補足ポテンシャルの溶液条件は移行リスクの推定に最適か?
宇野浩一郎・・・矢内純太
ダイズのCs体内分配に関わるミネラルネットワークの経時的変動
村島和樹・・・信濃卓郎
ポジトロンイメージング技術によるリンゴ樹体内セシウム動態の可視化
野田祐作・・・・・河地有木
シロバナルーピンのセシウム吸収・分配における元素間相互作用
菅あやね・・・・・信濃卓郎
ミミズが土壌表層の放射性セシウムの垂直分布に及ぼす影響
田中草太・・・佐藤 孝
原位置モデル水田実験による灌漑水田由来137Csの影響評価
Anastasiia Klevtsov・・・・・・・原田直樹
多地点の農家圃場で生産した玄米と大豆子実の放射性セシウム濃度の比較
藤村恵人・・・・・・・鈴木政崇
福島県内の農地における放射性物質に関する研究(第57報)
ラッカセイの放射性セシウム吸収特性
平山孝・斎藤正明
福島県内の農地における放射性物質に関する研究(第58報)
低カリ条件下での水稲ポット栽培3作から評価した土壌改良資材の放射性セシウム吸収抑制効果の持続性
松岡宏明・井倉将人
草地更新時に施用した金雲母とゼオライトの放射性セシウム移行への影響
山田大吾・・栂村恭子
ヘアリーベッチおよびクリムゾンクローバーへの放射性セシウムの移行性
久保堅司・・・・佐藤 孝
農耕地土壌および作物における129I 濃度について
塚田祥文
福島県東部を対象とした灌漑水による水田へのカリウム供給量マップ
錦織達啓・久保田富次郎
福島第一原発事故除染後農地における緑肥作物の春季播種が緑肥の開花期・窒素集積量に及ぼす影響
佐藤 孝・・・・・・・高階史章
福島県内の農地における放射性物質に関する研究(第56報)
玄ソバへの放射性セシウム移行特性への解析
斎藤正明・・平山 孝
福島県内の農地における放射性物質に関する研究(第59報)
籾殻くん炭を活用した塩化カリ代替効果の検証
浅枝諭史・・・・・三本菅猛
ポジトロンイメージング技術を用いたダイズ根系内のセシウム輸送における共存元素の影響解析
井倉将人・・・・・河地有木
A study on potassium application’s effect on cesium and strontium uptake in soybean
Muhamad Syaifudin・・・・・・・Takuro Shinano
機械学習を用いた福島県内農地土壌中非交換性カリ含量の空間分布推定―教師データ拡充の効果と除染後農地に対する適用可能性
矢ケ崎泰海・・・・・矢内純太
(森敏)
東電福島第一原発事故以降10年以上経過した今も基礎から応用に至るまで放射能による農地汚染の研究が続いています。
奇しくも現在ウクライナのザポロジエ原発がロシア軍の占領で大惨事を起こすの危機に陥っています。事故後の農地汚染の後始末はいつも農民や農学者に放り投げられてきました。絶対にそんな事態が起こらないように切に祈りたい。
放射性セシウム補足ポテンシャルの溶液条件は移行リスクの推定に最適か?
宇野浩一郎・・・矢内純太
ダイズのCs体内分配に関わるミネラルネットワークの経時的変動
村島和樹・・・信濃卓郎
ポジトロンイメージング技術によるリンゴ樹体内セシウム動態の可視化
野田祐作・・・・・河地有木
シロバナルーピンのセシウム吸収・分配における元素間相互作用
菅あやね・・・・・信濃卓郎
ミミズが土壌表層の放射性セシウムの垂直分布に及ぼす影響
田中草太・・・佐藤 孝
原位置モデル水田実験による灌漑水田由来137Csの影響評価
Anastasiia Klevtsov・・・・・・・原田直樹
多地点の農家圃場で生産した玄米と大豆子実の放射性セシウム濃度の比較
藤村恵人・・・・・・・鈴木政崇
福島県内の農地における放射性物質に関する研究(第57報)
ラッカセイの放射性セシウム吸収特性
平山孝・斎藤正明
福島県内の農地における放射性物質に関する研究(第58報)
低カリ条件下での水稲ポット栽培3作から評価した土壌改良資材の放射性セシウム吸収抑制効果の持続性
松岡宏明・井倉将人
草地更新時に施用した金雲母とゼオライトの放射性セシウム移行への影響
山田大吾・・栂村恭子
ヘアリーベッチおよびクリムゾンクローバーへの放射性セシウムの移行性
久保堅司・・・・佐藤 孝
農耕地土壌および作物における129I 濃度について
塚田祥文
福島県東部を対象とした灌漑水による水田へのカリウム供給量マップ
錦織達啓・久保田富次郎
福島第一原発事故除染後農地における緑肥作物の春季播種が緑肥の開花期・窒素集積量に及ぼす影響
佐藤 孝・・・・・・・高階史章
福島県内の農地における放射性物質に関する研究(第56報)
玄ソバへの放射性セシウム移行特性への解析
斎藤正明・・平山 孝
福島県内の農地における放射性物質に関する研究(第59報)
籾殻くん炭を活用した塩化カリ代替効果の検証
浅枝諭史・・・・・三本菅猛
ポジトロンイメージング技術を用いたダイズ根系内のセシウム輸送における共存元素の影響解析
井倉将人・・・・・河地有木
A study on potassium application’s effect on cesium and strontium uptake in soybean
Muhamad Syaifudin・・・・・・・Takuro Shinano
機械学習を用いた福島県内農地土壌中非交換性カリ含量の空間分布推定―教師データ拡充の効果と除染後農地に対する適用可能性
矢ケ崎泰海・・・・・矢内純太
(森敏)
2022-08-05 12:16 |
カテゴリ:未分類
世界が危惧してきたように、無知で非常識極まりないロシア軍によって占拠されているウクライナのサポリッジャ原発が、制御不能の暴発の危機にさらされている。
これはウクライナとロシアだけでない人類存亡の危機だ。
国連やIAEAだけではなく、ウクライナとロシアがテーブルについて、危機の打開を図る必要に迫られている。
食料危機でウクライナからの小麦の輸出以上に、人類に与える影響は計り知れない。
サポリッジャ原発が制御不能であるので、いずれ暴発すれば狂犬プーチンのいるモスクワも、風向きや降雨によって放射能雲プルームに襲われる可能性大である。
ウクライナとロシアの小麦や肥沃なチェリノーゼム土壌も放射能汚染で全滅となるだろう。
以下全文転載です。
ウクライナ南東部の原発は「完全に制御不能」=IAEA
BBC News 2022/08/04 16:00
AP通信によると、グロッシ事務局長はサポリッジャ原発で点検と修繕を行う必要があると述べた。
「いかなる原子力施設でも決して起きてはならない事が存在する」と、グロッシ氏は述べた。
ウクライナ南東部にある欧州最大のザポリッジャ原発は、ロシアとウクライナの戦闘が起きている場所から近く、危険な状態にある。
アントニー・ブリンケン米国務長官は今週初め、ロシアが同原発を、ウクライナ軍への攻撃拠点として利用していると非難した。
ウクライナ当局は、ロシアがウクライナ南部のドニプロ川沿いにある原発の敷地内に軍隊を駐留させ、軍用機器を保管しているとしている。
しかし、ロシアに任命された同地域の当局者はロイター通信に対し、ウクライナ軍が西側諸国から供給された武器を使って原発を攻撃していると語った。
ザポリッジャ州のロシア占領地を統括するエフゲニー・バリツキー氏は、ウクライナ軍の攻撃からロシア軍がいかに原子力施設を守っているかをIAEAに示す用意があると述べた。
「非常に脆弱な状況」
サポリッジャ原発では3月、ロシア軍の砲撃を受けて火災が発生し、国際的な批判が沸き起こった。鎮火後にロシア軍は原発を制圧した。
現在もロシアの支配下でウクライナ人スタッフが原発の稼働を続けている。
米ニューヨークの国連本部で開かれた記者会見で、グロッシ氏は、「非常に脆弱(ぜいじゃく)な状況にある。原子力の安全に関するあらゆる原則が何らかの方法で破られ、それが続くことを我々は許すことはできない」と述べた。
グロッシ氏は、原発に送る視察団をできるだけ早急に結成しようとしているが、戦闘地域を訪問するリスクを考慮すると、国連の承認だけでなくウクライナ側とロシア側の同意も必要だとした。
ウクライナの原子力発電公社は6月、IAEA視察団が訪問すれば原発におけるロシアの存在を正当化することになるとして、IAEAを招かないとした。
調査必要な核物質
グロッシ氏はAP通信に対し、IAEAとサポリッジャ原発のスタッフとの連絡は「途切れ途切れ」の状態で、機器などのサプライチェーンは寸断されていると説明。調査が必要な核物質が大量にあることも明かした。
「この戦争が激化する中、何もせずにいるというのは容認できない」とグロッシ氏は述べた。「ザポリッジャ原子力発電所で事故が起きたら、天災のせいにはできない。対応するのは我々のみだ。みんなのサポートが必要だ」。
ロシアが原発を「核の盾」として利用していると非難するブリンケン米国務長官は、「当然、原発が絡む恐ろしい事故が起きないよう、ウクライナ側は反撃できずにいる」と述べた。
ウクライナでは1986年、北部チョルノービリ原子力発電所の原子炉が爆発し、世界最悪の原発事故が発生した。
ロシア軍は2月24日の侵攻開始から間もなくチョルノービリ原発も占拠したものの、5週間後に撤退した。敷地内のコンピューターは略奪されたり、破損されたりしたが、廃炉作業が進む原発の設備自体に被害はなかった。
付記:
朝日新聞が半ページを使って「ロシア原発を軍事基地化」という報道をしている。その中で米紙ウオールストリートジャーナル紙を引用し、「ザポリージャ原発には500人以上のロシア兵と重砲が展開し、原子炉の冷却に使う貯水池のそばに地雷も仕掛けている。ブリンケン米国務長官は今日1日、ロシアが同原発の一帯からウクライナ軍を攻撃していると指摘。ウクライナが反撃できないことを利用し、同原発を『核の盾』に使っていると非難した。」
追記1:
実にきわどい事態が進行している!
原発攻撃で原子炉停止 ロシアとウクライナ、互いを非難
AFPBB News 2022/08/06 04:48
【AFP=時事】ウクライナ南東部でロシア軍に占拠されている欧州最大のザポリージャ原子力発電所が5日、攻撃を受け、原子炉1基が停止した。ウクライナとロシアはいずれも、相手側による攻撃だと非難している。
ザポリージャ原発は、ロシア軍がウクライナ侵攻の初期に占拠していた。ウクライナ政府は、ロシア軍が原発内に重火器を保管していると非難。一方のロシア政府は、ウクライナ軍が原発を攻撃していると批判してきた。
ウクライナの国営原子力企業エネルゴアトムは、原子炉がある建物の近くで3回の攻撃があったと説明。「水素漏れや、放射性物質飛散の恐れがあり、火災の危険性が高い」とした。死傷者への言及はなかった。
同社によると、ロシア国営原子力企業ロスアトムの職員は攻撃前に原発から避難。攻撃により電力ケーブルが破損し、原子炉1基が停止した。ウクライナ外務省は、稼働中の原子炉への攻撃は「原子力爆弾の使用と同等の結果」をもたらす恐れがあると批判した。
一方、ロシア国防省は、ウクライナ側の主張を否定。ウクライナ部隊がザポリージャ原発と同原発のあるエネルゴダル市に対し3回の砲撃を行ったとし、ウォロディミル・ゼレンスキー政権の「核テロ行為」を非難するよう国際機関に要請した。
追記2:以下、報道がかなり錯綜している。危険な情報戦が続いている。
欧州最大級・ザポリージャ原発に新たな砲撃…核の大惨事回避「奇跡は永遠には続かない」
読売新聞2022/08/08 00:51
ウクライナの国営原子力企業「エネルゴアトム」は7日、ロシア軍が占拠する南部ザポリージャ原子力発電所に6日夜、露軍が砲撃し、使用済み核燃料の貯蔵施設付近に着弾したと発表した。ロシア通信によると、地元の親露派勢力は7日、ウクライナ軍がロケット弾で原発を攻撃したと主張した。原発には5日も2度にわたり砲撃があったばかりで、欧州最大規模の原発を巡る緊張が高まっている。
エネルゴアトムによると、6日夜の砲撃で、放射性物質を監視するセンサー3基が損傷した。貯蔵施設には使用済み核燃料を収容する174の容器が置かれていた。エネルゴアトムは、センサーの損傷で「異常の迅速な発見と対応は不可能になった」と説明し、「核の大惨事は奇跡的に回避できたが、奇跡は永遠には続かない」とも強調した。砲撃の影響は約800平方メートルに及び、作業員1人が負傷したという。
原発を占拠している約500人の露軍兵士や露側の原子力企業関係者は事前にシェルターに退避していたとしている。
一方、地元の親露派勢力は、ウクライナの部隊が多連装ロケットシステムで使用済み核燃料施の貯蔵エリアを攻撃したと主張している。
5日の砲撃でも、ウクライナとロシアが互いに相手の攻撃だと非難していた。
露軍は原発に重火器を持ち込むなどして軍事拠点化を進めている。
これはウクライナとロシアだけでない人類存亡の危機だ。
国連やIAEAだけではなく、ウクライナとロシアがテーブルについて、危機の打開を図る必要に迫られている。
食料危機でウクライナからの小麦の輸出以上に、人類に与える影響は計り知れない。
サポリッジャ原発が制御不能であるので、いずれ暴発すれば狂犬プーチンのいるモスクワも、風向きや降雨によって放射能雲プルームに襲われる可能性大である。
ウクライナとロシアの小麦や肥沃なチェリノーゼム土壌も放射能汚染で全滅となるだろう。
以下全文転載です。
ウクライナ南東部の原発は「完全に制御不能」=IAEA
BBC News 2022/08/04 16:00
AP通信によると、グロッシ事務局長はサポリッジャ原発で点検と修繕を行う必要があると述べた。
「いかなる原子力施設でも決して起きてはならない事が存在する」と、グロッシ氏は述べた。
ウクライナ南東部にある欧州最大のザポリッジャ原発は、ロシアとウクライナの戦闘が起きている場所から近く、危険な状態にある。
アントニー・ブリンケン米国務長官は今週初め、ロシアが同原発を、ウクライナ軍への攻撃拠点として利用していると非難した。
ウクライナ当局は、ロシアがウクライナ南部のドニプロ川沿いにある原発の敷地内に軍隊を駐留させ、軍用機器を保管しているとしている。
しかし、ロシアに任命された同地域の当局者はロイター通信に対し、ウクライナ軍が西側諸国から供給された武器を使って原発を攻撃していると語った。
ザポリッジャ州のロシア占領地を統括するエフゲニー・バリツキー氏は、ウクライナ軍の攻撃からロシア軍がいかに原子力施設を守っているかをIAEAに示す用意があると述べた。
「非常に脆弱な状況」
サポリッジャ原発では3月、ロシア軍の砲撃を受けて火災が発生し、国際的な批判が沸き起こった。鎮火後にロシア軍は原発を制圧した。
現在もロシアの支配下でウクライナ人スタッフが原発の稼働を続けている。
米ニューヨークの国連本部で開かれた記者会見で、グロッシ氏は、「非常に脆弱(ぜいじゃく)な状況にある。原子力の安全に関するあらゆる原則が何らかの方法で破られ、それが続くことを我々は許すことはできない」と述べた。
グロッシ氏は、原発に送る視察団をできるだけ早急に結成しようとしているが、戦闘地域を訪問するリスクを考慮すると、国連の承認だけでなくウクライナ側とロシア側の同意も必要だとした。
ウクライナの原子力発電公社は6月、IAEA視察団が訪問すれば原発におけるロシアの存在を正当化することになるとして、IAEAを招かないとした。
調査必要な核物質
グロッシ氏はAP通信に対し、IAEAとサポリッジャ原発のスタッフとの連絡は「途切れ途切れ」の状態で、機器などのサプライチェーンは寸断されていると説明。調査が必要な核物質が大量にあることも明かした。
「この戦争が激化する中、何もせずにいるというのは容認できない」とグロッシ氏は述べた。「ザポリッジャ原子力発電所で事故が起きたら、天災のせいにはできない。対応するのは我々のみだ。みんなのサポートが必要だ」。
ロシアが原発を「核の盾」として利用していると非難するブリンケン米国務長官は、「当然、原発が絡む恐ろしい事故が起きないよう、ウクライナ側は反撃できずにいる」と述べた。
ウクライナでは1986年、北部チョルノービリ原子力発電所の原子炉が爆発し、世界最悪の原発事故が発生した。
ロシア軍は2月24日の侵攻開始から間もなくチョルノービリ原発も占拠したものの、5週間後に撤退した。敷地内のコンピューターは略奪されたり、破損されたりしたが、廃炉作業が進む原発の設備自体に被害はなかった。
付記:
朝日新聞が半ページを使って「ロシア原発を軍事基地化」という報道をしている。その中で米紙ウオールストリートジャーナル紙を引用し、「ザポリージャ原発には500人以上のロシア兵と重砲が展開し、原子炉の冷却に使う貯水池のそばに地雷も仕掛けている。ブリンケン米国務長官は今日1日、ロシアが同原発の一帯からウクライナ軍を攻撃していると指摘。ウクライナが反撃できないことを利用し、同原発を『核の盾』に使っていると非難した。」
追記1:
実にきわどい事態が進行している!
原発攻撃で原子炉停止 ロシアとウクライナ、互いを非難
AFPBB News 2022/08/06 04:48
【AFP=時事】ウクライナ南東部でロシア軍に占拠されている欧州最大のザポリージャ原子力発電所が5日、攻撃を受け、原子炉1基が停止した。ウクライナとロシアはいずれも、相手側による攻撃だと非難している。
ザポリージャ原発は、ロシア軍がウクライナ侵攻の初期に占拠していた。ウクライナ政府は、ロシア軍が原発内に重火器を保管していると非難。一方のロシア政府は、ウクライナ軍が原発を攻撃していると批判してきた。
ウクライナの国営原子力企業エネルゴアトムは、原子炉がある建物の近くで3回の攻撃があったと説明。「水素漏れや、放射性物質飛散の恐れがあり、火災の危険性が高い」とした。死傷者への言及はなかった。
同社によると、ロシア国営原子力企業ロスアトムの職員は攻撃前に原発から避難。攻撃により電力ケーブルが破損し、原子炉1基が停止した。ウクライナ外務省は、稼働中の原子炉への攻撃は「原子力爆弾の使用と同等の結果」をもたらす恐れがあると批判した。
一方、ロシア国防省は、ウクライナ側の主張を否定。ウクライナ部隊がザポリージャ原発と同原発のあるエネルゴダル市に対し3回の砲撃を行ったとし、ウォロディミル・ゼレンスキー政権の「核テロ行為」を非難するよう国際機関に要請した。
追記2:以下、報道がかなり錯綜している。危険な情報戦が続いている。
欧州最大級・ザポリージャ原発に新たな砲撃…核の大惨事回避「奇跡は永遠には続かない」
読売新聞2022/08/08 00:51
ウクライナの国営原子力企業「エネルゴアトム」は7日、ロシア軍が占拠する南部ザポリージャ原子力発電所に6日夜、露軍が砲撃し、使用済み核燃料の貯蔵施設付近に着弾したと発表した。ロシア通信によると、地元の親露派勢力は7日、ウクライナ軍がロケット弾で原発を攻撃したと主張した。原発には5日も2度にわたり砲撃があったばかりで、欧州最大規模の原発を巡る緊張が高まっている。
エネルゴアトムによると、6日夜の砲撃で、放射性物質を監視するセンサー3基が損傷した。貯蔵施設には使用済み核燃料を収容する174の容器が置かれていた。エネルゴアトムは、センサーの損傷で「異常の迅速な発見と対応は不可能になった」と説明し、「核の大惨事は奇跡的に回避できたが、奇跡は永遠には続かない」とも強調した。砲撃の影響は約800平方メートルに及び、作業員1人が負傷したという。
原発を占拠している約500人の露軍兵士や露側の原子力企業関係者は事前にシェルターに退避していたとしている。
一方、地元の親露派勢力は、ウクライナの部隊が多連装ロケットシステムで使用済み核燃料施の貯蔵エリアを攻撃したと主張している。
5日の砲撃でも、ウクライナとロシアが互いに相手の攻撃だと非難していた。
露軍は原発に重火器を持ち込むなどして軍事拠点化を進めている。