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2022-12-09 14:14 | カテゴリ:未分類
30年以上前に「高度技術社会のパースペクテイブ」(竹内啓研究代表)という、『文理融合』のプロジェクトが、文科省の「重点研究」で始まった。その時に、公募班に若い研究者であった宮台氏が公募してきて、竹内先生が宮台さんの当時流行が始まった ”援助交際” に関する研究を 「これは面白い!」 と評価して、採択したことを覚えている。その後彼はぐんぐんと成長して、マスコミの寵児になっていった。

条件反射が早く、話術が巧みで、快刀乱麻で、文章も切れるので、マスコミの引っ張りだこである。

今回彼を狙った人物がどういう思想的背景を持った人物か知らないが、世の中を楽しくしてくれる人物を、世の中から消さないでほしいと思う。

社会学者というものは、あらゆる社会現象に対して、感度を高めておかねばならないので、危険を察知したら、声高に叫ばなければならない。それに過剰に反応して、反感を持つ人も多々あるとは思う。

しかし、社会学者という社会のカナリアを窒息させてはいけない。そんなことをするといずれは自分自身が窒息することになりかねない。



「頭や心がダメージを受けている訳ではない」
 宮台真司さんが“活動再開”
日テレNEWS – 2022. 21:37

男に切りつけられ重傷を負った社会学者で東京都立大学教授の宮台真司さんが7日、インターネット番組に出演、「頭や心がダメージを受けている訳ではない」として、活動を再開すると発表しました。

社会学者 東京都立大学 宮台真司教授
「僕にとって、驚天動地の事態ではありました。驚くほどの速度で回復して、自力で動けるようになったということで退院させていただいた」
社会学者の宮台真司さんが7日、耳のあたりにガーゼをあてた状態でインターネット番組に出演しました。11月29日、東京都立大学で男に切りつけられ重傷を負いました。

社会学者 東京都立大学 宮台真司教授
「(手術中)麻酔ぶち込まれまくりの状況で、意識ももうろうとしているしみたいなことだったので。これだけ深刻なのに(報道では)『重傷だが命に別条はない』。言葉の軽さと自分の置かれている状況のギャップに結構衝撃を受けました」
宮台さんは、事件については、「私が推測することは一切ありません」と話すにとどめました。「頭や心がダメージを受けている訳ではない」として、活動を再開すると発表しました。

宮台さんを切りつけた男は逃走中で、警視庁が行方を追っています。(8日午後5時30分時点)

2022-11-07 19:54 | カテゴリ:未分類

  1944-45年ごろの太平洋戦争での日本の敗戦前は、テニアンやサイパンから飛んでくるB29による米軍の激しい絨毯(じゅうたん)爆撃で、日本の東京を中心に主要な地方都市は焼失した。アメリカ軍はやりたい放題のことをやらかしたのだ。それをあらかじめ見越してか、都市部の小学生を地方の田舎の小学校舎へ強制的な集団学童疎開を文科省が指導した。

  子供たちを命の危険から避けるのが最優先課題であったのだが、実は都心部の深刻な食糧危機(食い扶持減らし)が大きな誘因であった。それでも疎開させられた子供たちはひもじい思いで、何かにつけて農村の地元の子供たちからからいじめに会い差別された。多くの学童が「疎開」に対してはいい思い出を抱いていない。あまりにも食べ物がひもじかったからでもある。

  現在の上皇も幼少のころは日光の御用邸に学童疎開していた。腹ペコのひもじい思いをしていたに違いない。

  ウクライナの大都市キーウが、今後もさらに狂犬プーチンの異常なばかりの執念で、「神風ドローン」や「長距離ロケット砲」によって、メタメタにされる可能性が出てきた。すでに、主要な電力施設が破壊されて、冬を迎えた暖房を乗り越えられなくなって、人々に薪ストーブが使える田舎への疎開を呼び掛ける事態になっている。このままでは病弱者や老人に多数の死者が出るだろう。

  食糧危機はまだ叫ばれていないが、物流が遮断された地方によっては相当深刻になっているものと想像する。どこまで続くぬかるみぞ。

  早く狂犬プーチンを拘束しなければ!





停電継続、450万人以上に影響 キーウ市長、「一時退避」に言及

7日17時51分共同通信
 【キーウ共同】ウクライナのゼレンスキー大統領は6日のビデオ演説で、首都キーウ(キエフ)と6州で計画停電が行われ、450万人以上に影響したと述べた。停電の大半が首都とその周辺と説明。キーウのクリチコ市長は5日のテレビ番組で、完全な停電や断水といった最悪の事態となれば、一時的退避もあり得るとの考えを示した。

 クリチコ氏は「敵は町に暖房や電気、水がなくなり、われわれが死ぬようにあらゆる手を尽くしている」と指摘。市当局は「あらゆるシナリオに備えている」と説明し、市民に飲料水や食料の備蓄を呼びかけた。市内に100カ所の「暖房シェルター」を設置する方針も発表した。



(森敏)
付記:これまでも、各所で述べたことだが、小生の8人家族は敗戦直前に朝鮮から高知市旭駅前町に引き揚げてきたものの、親父が次男で田畑がなく、敗戦で「朝鮮電力」のサラリーマンを失職して、戦後は母親がタンスの着物とバカ芋をお百姓さんと物々交換していた。極貧だった。日本中では農家以外のだれもが飢えていたのだ。

  小麦の生産国であるウクライナがパンが食べられ無いところまで追い込まれないことを祈るのみだ。


追記1 11月10日にヘルソン市がロシア軍から解放された。ロシア軍は撤退前にインフラをメタメタに破壊の限りを尽くしたので、ヘルソン市にはウクライナ産の小麦粉が豊かにあっても、電力インフラが破壊されているので、電気が来なくて、調理が出来ずに、食糧難なんだそうである。平和な日本ではとても想像できなかった事態ですね!
2022-07-31 13:53 | カテゴリ:未分類
  世界の大学に深く静かに進行している中国共産党が出資している「孔子学院」についての、記事を転載します。朝日、毎日、読売、東京新聞など社内記者が親中国派に無意識に汚染されている大新聞は、この孔子学院のことを、調査報道でもあまり取り上げませんが、地方紙の神戸新聞は気を吐いています。
  
     旧統一教会が日本の政治家に深く静かに浸透してきたように、、それと同じ親切を装った、おためごかしの手法で、習近平中国共産党は日本の大学の弱み(お金がない、優秀な中国文学や政治の人材が不足している)を突いて長期戦略で、長い時間をかけて、浸透しています。私学(以下に赤字で示しました)が狙い撃ちされていますね。
  
  よく調べると、大学の中枢(学長や理事長などの執行部)にも浸透している可能性があります。
  
  

【独自】兵庫医大が「孔子学院」閉鎖 中国と共同運営の研究機関 海外では「スパイ拠点」疑惑も
7/29(金) 20:30配信 神戸新聞NEXT


兵庫医科大(兵庫県西宮市)が、東洋医学の教育・研究拠点として中国の大学と共同運営していた「中医薬孔子学院」を閉鎖したことが分かった。「孔子学院」は中国政府が約20年前から各国の大学内に設立し、日本でも15大学に開設されたが、文部科学省が活動の不透明さを問題視し、欧米を中心にスパイ活動や政治宣伝機関の拠点とも疑われている。閉鎖は国内2例目で、同様の動きが相次ぐ可能性もある。孔子学院は2004年以降、中国語や中国文化を広げるため、中国政府の出資で設立。中国側の報道によると、160超の国・地域で約550カ所が開設されている。現地と中国の教育機関が共同運営する形を取り、中国側が中国人教師を派遣している。  文科省によると、日本では05年に立命館大が初めて開設。早稲田大や関西外国語大などが続き、19年までに計15大学に広がった。  一方、近年になって米国では、孔子学院が中国のスパイ活動に利用されている疑いがあるとして、米連邦捜査局(FBI)が捜査。英国では今年9月に首相の後任を決める与党・保守党の党首選で、孔子学院を一斉閉鎖させることの是非が争点に浮上している。  関係者によると、兵庫医科大は12年11月、中国の北京中医薬大学と共同で「中医薬孔子学院」を設立。日本で漢方薬として普及している「中医薬」の研究や人材育成を進めるとうたい、医療系の孔子学院はアジア初だった。  日中の研究者や学生が相互に訪れ、シンポジウムや市民講座も開いてきた。ただ、学院長は兵庫医科大の教授が務める一方で、中国人とみられる副学院長にも「中国側学院長」との肩書があり、どちらが事実上のトップで意思決定の権限を持つのかが見えにくいとの指摘もあったという。  閉鎖は2月28日付。兵庫医科大は理由について「運営母体の中国国際中文教育基金会との協定期間が満了したため」とのみ説明。閉鎖の経緯▽運営に絡んで中国から資金提供を受けていたか▽教育活動への介入があったか-などについては「お答えできない」としている。  国内では昨年3月に工学院大学(東京)が閉鎖。文科省によると、現在は13大学
(補注:立命館大学、立命館アジア太平洋大学、桜美林大学、北陸大学、愛知大学、札幌大学、大阪産業大学、岡山商科大学、早稲田大学、福山大学、関西外国語大学、武蔵野大学、山梨学院大学
が運営している。
   
  
英党首選、スナク氏「孔子学院すべて閉鎖」 対中融和批判かわす狙い
 英国の次期首相を決める与党・保守党の党首選で、決選投票に残ったスナク前財務相が対中強硬姿勢をアピールしている。25日には、首相になれば英国内の中国語教育機関「孔子学院」を全て閉鎖すると宣言した。ライバルのトラス外相陣営は「スナク氏は中国に融和的だ」と批判しており、これをかわす狙いとみられる。
 「中国、そして中国共産党は、英国と世界の安全保障や繁栄にとって今世紀最大の脅威だ」。スナク氏は25日、ツイッターで中国に厳しく臨む姿勢を強調。首相に就任すれば英国に約30カ所ある孔子学院も閉じると投稿した。孔子学院は日本を含む世界各国で中国語教育を行う一方、スパイ活動やプロパガンダ(宣伝工作)の拠点とも疑われている。
 スナク氏は財務相時代の昨年7月、ロンドンでの講演で「中国とは成熟し、バランスのとれた関係が必要」との見解を表明。中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報(英語電子版)は今月14日、スナク氏について「英中関係発展に現実的な見解を持つ唯一の候補者」と評価していた。
 英メディアによると、対中強硬派のトラス氏を支持するダンカンスミス元党首は、スナク氏の方針転換について「驚きだ」と発言。スナク氏の下で英財務省は中国との経済関連協定の締結を推進してきたと指摘し、中国による香港の民主派弾圧などが激化した過去2年間で「あなたは一体どこにいたのか」とスナク氏を批判した。
 一方、スナク氏も25日のテレビ討論会で、トラス氏がかつて「中国との関係は黄金期を迎える」と述べたと指摘し、中国への近さを非難した。【ロンドン篠田航一】

(森敏)

付記:孔子学院に関して以前にも警戒すべきと述べておきました。
 
  2020/12/03 : 孔子学院の廃止


追記: ネットのZAKZAKから以下の取材情報が発信されている (2022/08/16 15:30)

:::::::::::孔子学院を設置しているほかの大学に今後の対応について聞いた。

立命館大学(京都市)広報課は「透明性の高い運営を行っており、すべての取り組みをホームページにて公開しています」とした上で、閉鎖の可能性について「現状そのような検討はしておりません」と回答した。同じ学校法人が運営する立命館アジア太平洋大学(大分県別府市)も同様の見解を示した。

大阪産業大学(大阪府大東市)の孔子学院事務局は「HPのリニューアルを計画中であり、情報の発信に努めます」とし、閉鎖などの予定はないとしている。

早稲田大学広報室広報課は、学内の担当部署に確認したところ、「お伝えできる内容がございませんので、申し訳ありませんが取材はお断りいたします」との回答があったとした。

孔子学院をめぐっては、海外では中国の政治宣伝や、有害な影響力強化に利用されているとの指摘もあり、欧米の視線は厳しい。

米ドナルド・トランプ前政権では、マイク・ポンペオ国務長官(当時)は20年8月、孔子学院が「中国共産党による世界規模のプロパガンダ工作に使われている」と断定。米国内の学院を統括するワシントンの「孔子学院米国センター」を大使館や領事館と同様の外国公館に指定すると発表した。

ジョー・バイデン政権下でも孔子学院への厳しい視線は継承されている。中央情報局(CIA)のウィリアム・バーンズ長官は21年2月の指名承認公聴会で孔子学院について「真のリスクだ」と指摘し、米教育機関に「厳重な警戒」を要請した。自身が大学の学長ならば孔子学院を閉鎖するとも言明している。

米シンクタンク「民主主義防衛財団」が昨年12月に出したリポートによると、18年から21年までに、米国で活動する孔子学院の数は113から34に減ったという。

オーストラリアも20年12月に地方政府や大学などが外国と結んだ協定について、連邦政府が破棄できる法律を制定した。

英国では次期首相を決める保守党の党首選で、有力候補のリシ・スナク前財務相が英国内に30ほどある孔子学院を全て閉鎖させると主張した。党首選の争点となっている対中政策の中でも象徴的な事例となっている。

自民党の保守系グループ「日本の尊厳と国益を護る会」メンバーである山田宏参院議員は、「孔子学院は海外ではスパイの温床で総領事館と関係を持ち、活動していると指摘されている。表に出ている情報だけでは『透明性がある』とはいえない。日本もよりセンシティブになるべきで、自由主義国として情報共有すべきではないか」と警鐘を鳴らした。

2022-07-06 15:30 | カテゴリ:未分類
森鷗外記念館会場を約2時間見て回ったのですが、さすがに疲れたので、以下3点だけ印象を記します。ここはこれで4回目の訪問ですが、小生が馬齢を重ねてきたからだと思いますが、その都度新しい発見があります。

  
      
〇森鷗外の親友である賀古鶴所(かこつるど)による聞き書きのカナ文字の遺書と、鷗外のデスマスクが展示されていた。その遺書の一部を抜き書きすると、
  
   
::::::宮内省陸軍 皆縁故アレドモ
   
生死ノ別ルル瞬間 アラユル
   
外形的取扱ヒを辞す 森林太郎
   
トシテ死セントス 墓は 森林太郎墓 ノミ
   
一字もホル可カラズ 書は中村不折に依託シ 
  
宮内省陸軍ノ栄典ハ絶対ニ取リヤメヲ請フ
  
::::::

  
  
〇鷗外の墓のある三鷹禅林寺の「森林太郎墓」の反対側には、太宰治の墓があり太宰が玉川上水で入水自殺した日の「桜桃忌」には、毎年多くのファンが集まる新聞記事が出ることで有名である。太宰のファンは森林太郎が森鷗外とは知らず、つれないんだそうだ。
生前の太宰は以下のような言葉を残していると太宰の直筆の写しの文字が壁面に拡大して紹介されていた。墓の中の太宰治は恥ずかしげに喜んでいることだろう。 
 
「この墓地は清潔で鷗外の文章の片鱗がある。
 
私の汚い骨も、 こんな奇麗な墓地の片隅に
  
埋められたら、死後の救ひがあるかも知れないと、
  
ひそかに甘い空想をした日も無いではなかったが、
  
今はもう気持ちが萎縮してしまって、そんな空想など、
  
雲散霧消した。私にはそんな資格がない。」
     
   
〇「鷗外は晩年に、『空車』(むなぐるま)という随筆を書いていますが、これは古語です。この言葉は彼の現代的解釈によれば、馬車が引く大きな大八車のことです。そこには何も荷物が乗っていないが、道幅いっぱいの堂々とした空っぽの荷車のことです。鷗外は自分のことをこの容量の大きい「むなぐるま」だったと比喩しているのです。
森鷗外は多くの作品を書いていますが、その半分は翻訳本です。
医者として小説でデビューしようとしたら、あまりにも語学ができる文才だから外国の本の翻訳に専念しろ、と文科省か陸軍から言われて、本来の文学作品の創造に専念できなかったのではないだろうか。生涯作品数が少なすぎますね。特に長編作が。自分も同じ医学部出身の医者だったので、彼の気持ちが痛いほどよくわかります。
若い時から物書きに集中できていたら、もっと長生きできていたら、もっともっと優れた大作を書き上げていたのではないだろうか。」
 
というような内容の、森鷗外記念館館長の加賀乙彦氏のインタビュー映像が、撮影室で流れていた。
鷗外は語学の才があまりにも優れていたがゆえに、『衛生新編』など医学書の翻訳などという不本意な仕事をやらされたと同時に、陸軍医務総監として軍医行政をやらされ、人生を振り返ってみると、本当につまらなかったのだろうと思う。
それが証拠に上記の「遺言状」には宮内省や陸軍からの死後の栄誉(多分「大勲位」とか、「従何位」とかの称号)を辞退せよと遺族に厳命しているのである。
心底から国家的権威を忌み嫌っていたものと思われる。
   
家に帰って、文京区の図書館から現代日本文学大系8の森鷗外集(二)を借り出して、調べてみると、上記の『空車』という随筆の次に掲載されている『なかじきり』という最後の随筆の中に、鷗外は
    
約(つづ)めて云へばわたくしは終始ジレッタンチスムを以て人に知られた。
       
と自虐的に書かれてあって少しびっくりした。鷗外の人生は主観的には中途半端(なかじきり)だったと自戒しているのである。
  
ついでに鷗外の名誉ために付けくわえると、
    
『学問の自由研究と芸術の自由発展とを妨げる国は栄えるはずがない』
   
と著作『文芸の主義』に書かれているとのことである(小生は読んでいないが、会場で垂れ幕で紹介されていた)。外見の堅物の印象とは正反対に、鷗外は根っからの学問や芸術への「自由主義者」であったのである。
  
 
  
 
(森敏)

付記:森鷗外についてはこれまで以下のブログを上梓しています。ご参照ください。

2021/02/23 : 森戸辰男のお墓を発見
2020/09/08 : 小塩節「随想 森鴎外」 を読む
2015/12/04 : 藤田嗣治 三昧

2010/11/02 : 谷中の散策
2010/09/14 : なりたくない自分になるな

追記1:
この文章を書いた後、定期購読している學士会会報が送られてきた。その中に
『没後百年目の森鷗外』という題で 大塚美保聖心女子大学教授の文章が載っていた。
 大塚氏の要約では、

  
「::::ドイツ留学中から鷗外が一貫して追求したのは、自然科学と哲学、物質と精神、ひいては医学と文学という、互いに異質で統合不可能な二つの領域のいずれか一方を一義的に選択することなく、双方を「両価のままに統合する」ことであったと見る。:::」
 
と述べている。

私見では、鷗外が若い時からそのような高邁な決意「両価のままに統合する」をもって一貫して人生を貫徹したとはとても思えない。彼は津和野を出たときから、人生の最終段階に至るまで、「優柔不断」で「家」や「国家権力」に逆えなかったので、周りに請われるがままに、あれこれの分野に首を突っ込んで表面上を取り繕って、ある意味では食い散らかしてきたのである。文学に集中できなかったのである。だから「遺言状」で初めて、最初で最後に官位授与を否定し国家権力に抵抗したのである。
 
追記2
「鷗外 その終焉」というパンフレットが 平成14年に津和野の森鷗外記念館から発刊されている。その中に以下のように注目すべき記事が掲載されている。私見では、大方の鷗外に対する尊敬すべき外部評価はそれとして、鷗外自身の人生終焉の直前での最深層の下意識では「わが人生はつまらなかった」という自己評価だったのである。
     
看護婦・伊藤久子の証言
 それは、意識が不明になって、ご危篤に陥る一寸前の夜のことでした。枕元に侍していた私は、突然、博士の大きな声に驚かされました。
 「馬鹿らしい!馬鹿らしい!」
 そのお声は全く突然で、そして大きく太く高く、それが臨終の床にあるお方の声とは思はれないほど力のこもった、そして明晰なはっきりとしたお声でした。
 「どうかなさいましたか。」
私は静かにお枕元にいざり寄って、お顔色を覗きましたが、それきりお答えはなくて,うとうとと眠りを嗜むで居られるご様子でした。
(大正11年11月1日発行、「家庭雑誌」第8巻第11号より抜粋)
2022-06-18 15:59 | カテゴリ:未分類


ムーンショット

      
  すでに1か月前のことになるが、地方各紙が上記のような記事を掲載している。(ダブルクリックして拡大して読んでください)。
      
  文科省所轄の新しく始まる大型プロジェクトでは「ムーンショット型研究開発制度」と称して、年間800億円が計上されているようだ。それに応募してこれまでに採択された324人の研究者に対して、財務省が調べたところ。一人で掛け持ちする研究課題が10件以上の研究者が全体の6%、30件を超える研究者は2%もいるとのことである。
      
  6%ということは19名いるということであり、一人で平均して年間2.5億円もの多額の研究費を受け取るということである。もちろん彼/彼女の研究班の中には、他の研究組織などからの共同研究者が金魚のふんのように何名かが集っているはずだから、一人でこのお金を使うわけではないだろう。しかし掛け持ちしている他の9件からの研究費からも、彼/彼女にはお金が入るから、特定の個人に対して潤沢すぎるお金が入ってくることになる。一人で何人のポスドクを抱えるつもりか知らないが、面倒みられるのかねと、他人事ながら心配だ。
   
  当人は大学内外行政や授業や、講演や論文執筆やでほとんど時間がとられて、ポスドクや学生との交流に時間はほとんど得られないはずだ。週一回のゼミのための時間確保もママならないかもしれない。ましてや自分自身が実験に専念できる時間は皆無だろうと想像する。
    
  小生の知人では、、国立大学でも年間数十万円しか自由に使えるお金がないという嘆きも聞かれる。あまりのも極端な研究費の偏在である。
  
  「お前が無能であほだから仕方がないだろう!」
   
  と言われれば引き下がるしかないのかもしれないが、 研究者としての気力がそがれるほどの富の偏在が同じ職場で存在することは互いの精神衛生上甚だよろしくないことだと思う。
    
   
  さて、それはそれとして、

これを書いていてて、思いついたのだが、当面の喫緊の研究課題として
     
『ウクライナを勝たせるために、日本はどう貢献すべきか』
      
というテーマで、向こう5年間でいいから、全学問分野横断のプロジェクトを、文科省には起ち上げてもらえないだろうか? 毎年10億円、5年間で50億円もあれば、多くの研究者が参集出来て、活発な議論が出来て、素晴らしい政策提言が出てくることと思われる。
   
  あくまで学問的な議論だから、現今の週刊誌や月刊誌やテレビや、インターネットで、好き勝手な議論がなされているのを、根拠のある実証的な議論としてまとめ上げて、ウクライナ戦争の時々刻々の政策提言が出来ればいいのではないだろうか?(甘いかな)
      
  小生は昔、『高度技術社会のパースペクテイブ』(竹内啓研究統括)に参加させていただき、文理融合の科学技術論争を喧々諤々聞かせていただいた。この研究班からは、現在活躍されている多彩な有能な研究者が数多く輩出したと思う。

  しかし、この研究班の中でも、狂犬プーチンが唱えるような「核を使える」戦争の時代が来るということはだれも予測できていなかった。平和ボケの時代だったね。
   
  差し迫った核戦争のシミュレーションは誰がどれだけできているんだろうか?
  
  

  
(森敏)
追記:年間10億円は高いと思うかもしれないが、実はそうでもないのである。
前述の『高度技術社会のパースペクテイブ』プロジェクトでは、年間約2億円で3年間であったが、班員は公募で募り、総数50名に上っていた。文系の人には年間100-200万円を配布し、理系には200万円から500万円を配布していた。
 
小生が提案する上記『ウクライナを勝たせるためには、日本はどう貢献すべきか』(略称「ウクライナ戦争プロジェクト」と呼称したい)では。20年前よりも物価が上昇しているし、文系が使用する情報入手関連の電子機器も高額化している。たとえば人工衛星からの画像の入手や、ウクライナやロシアからの情報交信には、かなりの金額が必要である。総勢50人体制で組織するとなると、年間10億円では足りないかもしれない。




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