- 2020/08/16 : 放射性セシウム関連の演題: 2020年日本土壌肥料学会岡山大会講演要旨からの抜粋
- 2018/08/22 : 秋田県のお国自慢
- 2015/06/03 : 鳥の放射線被曝について
- 2014/05/17 : 必読文献「放射能土壌汚染対策特集」 が刊行された
- 2014/05/14 : 中国の広大なカドミウム汚染土壌に、日本の無・カドミウム米「コシヒカリ環1号」を
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左端のナンバーは講演要旨のなかの、講演部門ナンバーである。発表の共著者名は、全部書くと長くなるので筆頭著者と最後尾著者名だけを示しています。
放射能汚染現場に立脚した研究テーマが、生態系レベルから遺伝子レベルまで、多面的な展開の様相を呈していることが見て取れます。
これまでにない、新しい発明や発見が生まれることを期待したいと思います。
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4-3-2 イオンビーム照射によるダイズのCs低吸収突然変異体の作出 川端美玖…頼泰樹
8-1-1 アマランサス(Amaranthus species)の導管液に焦点を当てたCs吸収(第2報) 村上敏文・・・小林浩幸
8-1-2 圃場内における交換性カリ含量のばらつきの補正によるコムギの放射性セシウム蓄積性の品種間差異の解析 久保田堅司・・・・信濃卓郎
8-1-3 放射性セシウム対策水田における灌漑水量調節によるカリウム流亡抑制効果の検証 錦織達啓・・宮津進
8-1-4 QTL-seq解析およびHRM解析によるダイズの放射性セシウム吸収に関与した遺伝マーカーの探索 宇多真梧・・・・福原いずみ
8-1-5 福島県相馬郡飯館村の農耕地土壌におけるNH4+濃度変化とCs脱着率の関係解析 浅野育美・・・・矢内純太
8-1-6 機械学習による土壌特性値空間分布の推定―放射性セシウム移行モデルの広域適用に向けて 矢ケ崎泰海・・・・山口紀子
8-1-7 土壌の放射性Cs移行性を評価するための非交換性カリ定量法の検討-水稲、ダイズ作における3手法間の比較― 若林正吉・・・・・矢内純太
8-1-8 東北地方の牧草地黒ボク土の放射性Cs吸着・K放出能に対する風成塵の影響解明 北川結理・・・・矢内純太
8-1-9 除染更新後に再更新した採草地における利用2年目までの牧草中放射性セシウムの移行について 渋谷岳・・・・吉田由里江
8-1-10 福島県内の農地における放射性物質に関する研究(第48報)福島県内不耕起未栽培農地における放射性セシウム鉛直分布の経時変化 中山秀貴・・片桐優亮
8-1-11 福島県内の農地における放射性物質に関する研究(第50報) 水稲の無カリポット栽培における非交換性カリ含量が玄米の放射性セシウム吸収に及ぼす影響 永井華澄・・・鈴木芳成
8-1-12 除染後営農再開農地における形態別放射性セシウム分布と作物移行係数の関係 井倉将人・栗島克明
8-1-13 玄米への137Cs移行に関する中干期の土壌中交換性カリ含量の寄与 津村恵人・・・松波麻耶
8-1-14 異なるカリ資材などの施用における交換性カリ含量と牧草中放射性セシウム濃度の推移 山田大吾・・・・吉田由里江
8-1-15 大柿ダム低質から溶出する137Csの灌漑水への寄与について 塚田祥文
8-1-16 福島県内の農地における放射性物質に関する研究(第49報)除染と保全管理後に作付け再開した水田における水稲生育ムラの解消技術の検討 松岡宏明・・・永田修
8-1-17 安定セシウム吸着試験による新鮮落ち葉などの有機物のセシウム保持能の評価 眞中卓也・・・・古沢仁美
8-1-18 灌漑水を介した粗大有機物流入による水田土壌への137Cs付加の可能性 高橋篤広・・・・原田直樹
8-1-19 黒ボク土草地土壌に添加した放射性セシウム及びヨウ素の牧草への移行性に及ぼす有機物施用の影響 武田晃・・・・久松俊一
8-1-20 福島県内の農地における放射性物質に関する研究(第51報-低カリウム条件下における各種飼料用米品種・系統の玄米中Cs-137濃度の比較 斎藤隆・・後藤昭俊
8-1-21 福島県内の農地における放射性物質に関する研究(第52報)-除染後農地における農地群内の土壌中のCs-37濃度の分布について― 根本知明・・・志村浩雄
(森敏)
県立金足農業高校の高校野球の準優勝は実に立派だった。
秋田県では、スポーツでは他にも女子バドミントンのナガ・マツペアが活躍している。
女子フィギャースケートのロシアのザギトワ選手やロシアのプーチン大統領には秋田犬が寄贈されたことも耳に新しい。それよりはるか前から有名な秋田犬は「忠犬ハチ公」であり、渋谷ばかりでなく、東大農学部正門を入ってすぐ横には上野英三郎教授とじゃれているハチ公の銅像がある(すぐ近くの農学部展示館にはこのハチ公の内臓がフィラリアに侵されている内臓標本がそのまま保存されている。一見の価値ありです。)
秋田県ではぎばさ(海藻)とか金農パンケーキなどをこれから販路拡大したいとのこと(東京新聞)
実はいささか専門的になるが、昨年秋田県立大学の植物栄養学研究室が「放射性セシウムを吸収しないイネ」の開発に成功したことは、大学の研究者があまりにも謙虚であるためか、あまり話題になっていない。しかし、これは世界に誇るべき秋田県の快挙である。秋田県立大学は金足農業高校と同様、秋田県が財政的なスポンサーであるからである。あまり声を大にして言いたくないことだが、もしも今後の日本、韓国、中国などの稲作国で原子炉爆発を起こして放射性セシウムで土壌汚染したら、このお米の品種をカリ肥料の施用と共に翌年から使えばよいからである。この品種はほとんど放射性セシウムを玄米種子に移行させないからである。以下に紹介しておいた。
http://www.winep.jp/news/204.html
一方で、北朝鮮からの核ミサイル迎撃に向けてと称してイージスアショアを秋田県(と山口県)に防衛省が設置するという事が既定の事実のように来年度の防衛予算(2基で約2700億円)に計上されようとしている。このアメリカの軍需産業に支払う金額は、秋田県の全農業が生み出す農業生産額が1745億円であるのにくらべて、膨大な税金の浪費と言わざるを得ない。秋田県にとって、今年がいいことずくめの話ばかりではないのが、残念である。
(森敏)
追記1:高校野球の決勝戦までの連投で、最後の決勝戦途中で、急激に腰を痛めたという吉田投手は、秋田の郷里に凱旋して、テレビのインタビューで
「今、何が一番したいですか?」と問われて
「うちに帰って自分の布団でぐっすり寝たいです!」と答えていた。
肩を痛めたと思ったら、腰でよかったですね。腰の休養には自分の布団が一番なんですね。
同じ日にアメリカで活躍するダルビッシュ投手は完全に肩を痛めて今季は再起が絶望的とか。吉田君には、プロ野球に行って、力みすぎて、消耗品のように使われれて、早々に捨てられるような人生を歩むことのないように祈りたいものです。生真面目で責任感が強すぎるのが心配ですね。心ある地元ファンの誰もがそう思っているのではないでしょうか。
追記2:金足農業高校は秋田県立大学と高大連携を推進しており、数名が毎年秋田県立大学に進学しているんだそうです。
追記3.金足農業高校の甲子園での活躍に対して秋田県立大学でも「奉加帳」が回され相当の寄付金が集められたんだそうです。決勝戦ではいてもたってもおられず午後からわざわざ休暇を取ってスーパーハイビジョンテレビの会場での応援に旗を持って駆け付けた人も多かったとか。まさに吉田君の活躍は秋田県全県民を巻き込んだフィーバーだったんですね。
追記4.以下の記事や実際のテレビでの彼の投球を見ていると、素人の小生でも、「ちょっと危ういな」という気持ちを持った。プロで通じるか心配になってきた。やはり常時150km以上/hの直球を投げることができなければ、チェンジアップの技巧のみではプロには通じないだろう。もっともっと体つくりにプロのコーチの指導を受けないと、自己流のがむしゃらでは、球速の成長が伸び悩んで、本人も早々に肩を痛める壁にぶつかるのではないか。(9月1日 記)
以下本日の記事です
野球の第12回U18(18歳以下)アジア選手権(宮崎市、9月3日開幕)に出場する高校日本代表チームは8月31日、KIRISHIMAサンマリンスタジアム宮崎(宮崎市)で宮崎県高校選抜と壮行試合をし、4―2で勝利した。
2点リードの九回、吉田輝星(金足農)にやっと出番が巡ってきた。代表初登板。「投げたい」という気持ちがあふれ出た。ベンチからマウンドへ全力で駆けた。「しようとは思っていなかったんですが、気づいたら全力でした」。高ぶる右腕を、宮崎の1万6千人の観衆が大歓声で迎えた。
甲子園以来となる実戦。そこで見せたような冷静な力配分は必要なかった。初球からトップギア。「体が動きすぎて、ボールが行きすぎて、気持ちもあがっていました」:::::
追記5:後で知ったのだが、ルポライター広尾晃氏による
金足農「投手の玉砕」を賞賛する甲子園の病
という記事が載った。
高校野球で活躍した投手が、肩を酷使して、
松坂大輔以外は必ずしもプロで活躍できていない事実を述べて説得力がある。
必読だろう。
https://toyokeizai.net/articles/-/234656?page=4
追記6:ついに新潟高野連が投手の球数制限導入に踏み切った。この流れは必然的に全国高野連まで遡及するだろう。
新潟高野連が投手の球数制限導入 来春、全国の公式戦で初
2018年12月22日 19時32分
新潟県高野連が来年の春季新潟大会で投手の球数制限を導入することが22日、分かった。故障予防や選手の出場機会増などが目的で、投球数が100球に達した投手はそれ以降の回では投球できない。各都道府県高野連が管轄する公式戦で初めての取り組み。
高校野球界では投球過多による酷使が問題視されてきた。日本高野連は選手の負担軽減などを目的として、延長十三回開始のタイブレークを今春の選抜大会から実施。新潟県高野連による球数制限導入は、さらに踏み込んだ対策となる。新潟県高野連の理事会と評議員会で既に承認され、今後は決定事項として日本高野連に伝える。
(共同)
追記7.以下プロ野球選手自身からの警鐘です。
プロ野球DeNAの筒香嘉智外野手(27)が25日、東京都内の日本外国特派員協会で記者会見を開き「勝つことが第一に優先され、子供の将来がつぶれてしまっている」とスポーツ界の指導者の意識改革を訴えた。
野球界では勝利至上主義が子供たちのけがにつながっていると批判。多くの大会がトーナメントで行われることを問題視し「連投、連投で肘や肩の故障が小中学生に増えている。メンバーが固定され、試合に出られない子供もいる」と話し、改善策としてリーグ戦の導入や球数制限の実施を掲げた。
高校野球についても「昨年も球数の問題が出た。本当に子供たちのためになっているのか」と厳しく指摘。「新聞社が主催しているので、現状が良くないと思っている方がたくさんいても、なかなか思いを伝え切れていない」と問題提起した。
ヤマガラの巣のオートラジオグラフ。明確な黒い斑点はフォールアウト。コケなどの巣材そのものが強く内部被ばくしていることがわかる。卵やヒナはこれらと直接接触して被曝していることになる。
ヤマガラの巣とヒナ。原因不明だが、1匹死んでいる。
下記の2つの鳥の放射線被曝に関する新聞記事に関してであるが、これらの記事に先行して、すでにヤマガラとシジュウガラに関して、茨城県の鳥の研究家である関根学カメラマンが、巣材の放射能とオートラジオグラフの像を「フォールアウト 汚染された地に生きる」というタイトルで、「アサヒカメラ」2015年1月号(140-145ページ)で発表されている。例えばヤマガラの場合、Cs-134 28万ベクレル/kg、 Cs-137 91万ベクレル/kg (2014年6月測定)である。上のオートラジオグラフ(BAS像)に示すように、ヤマガラの巣材はコケ(地衣類)が主でギンギンに放射能汚染されており、ここからの直接の放射線量と巣をかけている所の空間線量との合量をヤマガラの幼鳥は卵の段階から孵化して飛び立つまで、被曝し続けるので、巣立つまでに相当量の積算線量を被曝することになる。それが、孵化率や幼鳥のその後の健康に影響しないわけがない。そういう実証データが、下記の新聞記事にあるように、今後ツバメの場合も蓄積していくものと予想される。
(朝日新聞 2015年3月25日掲載)
2011年の東京電力福島第一原発の事故後、北関東でオオタカの繁殖成功率が下がっていると、名古屋市立大などの研究グループが24日、発表した。「放射線被曝(ひばく)が影響している可能性がある」として調査を続ける。
名市大の村瀬香准教授(生態学)は、栃木県などの北関東でオオタカの繁殖状況を調べている宇都宮市のNPO法人と協力。事故後、同じエリアでの繁殖状況を比較した。原発からの直線距離は100~百数十キロという。
オオタカは年に1回繁殖する。1992年から事故以前の19年間は、観察した延べ684カ所の営巣地のうち、半数でひなが巣立つのを確認した。11~13年では、延べ122カ所のうち巣立ったのは35にとどまった。特に12年以降、産卵したものの孵化(ふか)や巣立ちまで至らない例が目立った。
村瀬准教授は、無作為に13の営巣地を選んで空間線量を測り、繁殖の成功率との因果関係を計算。空間線量の上昇が、成功率の低下に影響しているとの結果が得られたという。
ツバメの巣にセシウム 福島事故影響、13都県から
2015年5月27日 東京新聞朝刊
東京電力福島第一原発事故後の二〇一一年十一月から翌年三月までに採取した十三都県のツバメの巣から放射性物質が検出されたことが、山階鳥類研究所(千葉県我孫子市)の調査で分かった。ツバメの繁殖行動に変化がないかなど調べる。
同研究所は、野鳥愛好家らに一一年中に繁殖が確認されたツバメの巣の収集を呼び掛け、北海道から九州にわたる二十一都道府県から計百九十七個を集めた。
巣に含まれる放射性セシウムの濃度を測定すると、福島第一の約三百七十キロ圏内に位置する十三都県の百五十個から事故で放出されたセシウムが検出された。
福島県内では、集めた九十二個すべてから放射性セシウムを検出。セシウムの平均濃度は一キログラム当たり七五〇二ベクレルと十三都県の中で最も高く、最大で九万ベクレルだった。次いで高かったのは千葉県で平均三二一〇ベクレル、最大で一万二九〇〇ベクレルだった。平均で最も低かったのは山形県の三六ベクレル。
放射性物質に汚染された稲わらや下水汚泥などは、八〇〇〇ベクレルを超えると指定廃棄物として国が処理する対象となる。ツバメは泥やわらを使って巣を作るため、巣近くの土壌汚染を反映したとみられる。
調査した岩見恭子研究員は、一二年以降に採取した巣で濃度の変化を調べる。「原発事故と鳥の関係を調べた研究は少ない。繁殖への影響も記録していきたい」と話した。(三輪喜人)
(森敏)
付記1:ヤマガラの巣材の記事の転載は関根学氏の許可を得ている。
付記2:鳥の放射能影響に関しては、チェリノブイリ研究と福島の直近の研究を含めて以下の総説がなされている。
山本裕:「放射性物質の鳥類への影響」 北海道の自然.No.52, 29-36 (2014)
追記1:以前に以下の記事を書いたことがあります。ご参照ください。このころすでに山科鳥類研究所の研究者たちは、ツバメの巣を回収していました。
2012/07/26 : ツバメの巣を見て
追記2: ツバメは古巣を再利用するので、放射能値が高い場合は2011年に作った新しい巣である可能性が高いが、低いばあいは、2011年前の古巣である可能性が高い。山階鳥類研究所が福島のツバメの巣を回収する行為は、観測者が観測対象に介入する行為なので、次年度のツバメの生態環境をかく乱することになる。「不確定性原理」を地で行く行為であるのであまりよろしくない。
以下の目次に示されるように「日本土壌肥料学雑誌」の最新号に160頁にわたって、東電福島第一原発由来の放射能汚染に対する対策技術が特集されている。今後はチェリノブイリ原発事故の知見ばかりでなく、日本で実際に起こった原発事故の、日本の放射能汚染土壌で、日本の研究者たちによって、鋭意解明されてきたこれらの科学的知見を土台にして、さまざまな除染・減容化対策が加速されることを期待したい。
(森敏)
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日本土壌肥料学雑誌
放射能土壌汚染対策特集 第85巻第2号(2014年4月)
1.環境動態
農産物と農地の放射能汚染 谷山一郎
土壌中の放射線物質の広域的な濃度分布調査とそのマッピング
神山和則
土壌中放射性セシウムの経時的な変化 塚田祥文
放射性セシウムの沈着と農地土壌における輸送過程 江口定夫
福島原発事故による森林生態系における放射性セシウム汚染とその動態
金子真司・高橋正道・池田重人・赤間亮夫
2.吸収メカニズムと吸収抑制対策
水稲の放射性セシウム吸収抑制対策 太田 健
畑作物の放射性セシウム吸収抑制対策技術 小林浩幸
野菜の放射性セシウム(Cs)の吸収メカニズムと吸収抑制対策
小林智之・斎藤誠一・原 有
休眠期に汚染された落葉果樹における放射性セシウム移行メカニズムと吸収抑制対策 佐藤 守
飼料作物における放射性セシウム逓減技術 原田久富美
茶における放射性セシウム濃度低減技術の開発 野中邦彦
林産物への放射性セシウムの移行について
松村康行・杉山 翠・大野剛・佐藤睦人・佐藤守
水稲への放射性セシウム吸収に対する天然ゼオライトの施用効果
後藤逸男・蜷木朋子
3.除染減容化技術
農地除染用トラクタによる表土削り取り作業技術 宮原佳彦
反転耕による放射性セシウム汚染土壌の除染技術 渡邊好昭
水による土壌撹拌除去 牧野知之
ファイトレメデイエーションによる放射性セシウム除去効果の検証
佐藤睦人
除染技術の高度化-セシウム濃縮分離
(放射性物質で汚染された土壌からの熱処理によるセシウム除去)
万福裕造
4.放射能除染研究への期待
生産者の被曝から見た放射性物質汚染対策の課題 菅家文左衛門
農業分野における放射性セシウム対策の福島県の取り組み
三浦吉則
報文 イネの放射性セシウム吸収抑制のための交換性、および土壌溶液のカリウム、カルシウムレベルと土づくりに関する一考察
関本均・山田孝・宝規朋恵・松崎昭夫・三村徹郎
資料 シンポジウム「復興農学-東日本大震災からの復興への土壌科学の貢献と課題」
三輪睿太郎・宮崎毅・南条正巳・後藤逸男・菅野宗夫・溝口勝・中尾淳・椿淳一郎・中村道人・三枝正彦・木村眞人
以下の記事によると、中国では土壌の重金属汚染が深刻である。これは日本の農学研究者には半ば公然の常識であったのだが、今回中国当局自身がその実態を正直に告白した。PM2.5などの大気汚染ばかりでなく、土壌の重金属汚染も、中国ではこれ以上のっぴきならない状況になっていることがうかがえる。中国ではまだまだ米食が主食であるので、このまま放置すると今後潜在的なカドミウム摂取由来のイタイイタイ病が全国で多発するだろう。
1960-1970年代の日本の高度成長期に経験した「公害」が、中国では日本の10倍の人口であるがゆえに10倍の速度で進行していると考えたほうがよい。日本の10年が中国では一年で汚染が進行しているのだ。
日本の公害問題の解決のための苦難の歴史の成果が、今中国では生かされるべきである。日本の公害防止のための、科学技術の成果である製品(ハード)や立法や行政のノウハウ(ソフト)を技術移転する格好の時期が来たといえる。すでに日中韓で連携プレーが始まっているようだ。
早くも小生がこのブログで何回も紹介してきた、近年日本の農水省が発明した、無カドミウム米「コシヒカリ環1号」の出番だと思う。
中国の土壌汚染深刻、農地の19・4%で基準超
2014年04月19日 20時30分
【上海=鈴木隆弘】中国で初めて全国的な土壌汚染調査が行われ、農地の19・4%で基準を超えるカドミウム、銅などの重金属や有機物が検出され、土壌汚染が深刻なことが明らかになった。
17日に調査結果を公表した環境保護省と国土資源省は、農産物や人体に影響を与える恐れも指摘した。
両省は2005~13年に中国の総面積の約3分の2に当たる約630万平方キロ・メートルで重金属や有機物の汚染状況を調べた。林地や草地、建設用地などを含めた土壌全体でも16・1%が汚染された状況にあり、両省は「状況は楽観できない」と危機感を表す。
特に経済が発展した上海市を中心とする長江デルタ、広東省の珠江デルタのほか、東北の工業地帯で深刻だった。鉱工業生産で排出される汚水や排ガスが主な原因だが、農業でも化学肥料や農薬の過度な使用が汚染を引き起こしていた。
2014年04月19日 20時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
中国、土壌汚染も 全国の土地16%で基準超え 初の全国調査
2014.4.18 01:00
中国環境保護省と国土資源省は17日、全国の土壌汚染の状況をまとめた報告書を公表し、調査した約630万平方キロの土地のうち、16.1%で国が定めた基準を超える汚染が確認されたと明らかにした。
土壌汚染の全国調査は初めて。報告書は汚染状況について「楽観できない」としている。
調査は2005年4月~13年12月に実施。鉄鋼業や製紙業などの工業用地やその周辺では36.3%、工業用地の跡地では34.9%でそれぞれ基準を超えた汚染が確認された。
また耕地では19.4%で基準を超えており、主な汚染物質はカドミウムやニッケルなどとなっている。(共同)
(森敏)
追記1:
こういうことを書くと、「外交音痴の大学人がまた無責任なことを書く」と直ちにマスコミや農水省から反撃されそうだ。日本人の現在の尖閣列島を巡る「嫌中国」の雰囲気では、とても
「日本が開発した貴重な農業技術を、中国に供与することなどもってのほかのことだ。中国人は感謝の念を示さないだろう。過去の日本の中国に対する無償のODA援助の場合と同じく、供与したいなら『もらってやる』という態度を示すのではないか」
という疑念がただちに持ち上がるかもしれない。
しかし、せっかくの世界に向けて発信しうる日本のノーベル賞ものの品種が、農業の実際の被害現場で全然生かされないのは非常にもったいないことと思う。
作物の土壌からのカドミウム汚染防止対策には、従来は 1.工場からの排出源処理と、2.汚染土壌の剥離と非汚染土壌の客土 しか有効な対策がなかった。前者は行政問題であり、中国のような共産党一党独裁政権下での工業と共産党員が癒着した構造を直ちに断ち切るのは絶望的に困難なことだろう。後者は曾ての日本のカドミウム除染の経験でも、膨大な予算と年月を要するだろう(例えば、近年の福島県における放射性セシウム汚染水田の「表土剥離」と「客土」にいかに膨大なお金がかかるかを考えてみてもわかるだろう)。
最終的に上記1。と2。の政策でこの中国でのカドミウム問題を解決するにしても、当面日本が開発した「カドミウムを吸収しない品種・環一号」で人体へのカドミウムの経口吸収汚染を避けることは非常に賢明な政策だと思うのだが。イタイイタイ病その他の将来の医療費もかからないことになるので中国国家経済にとってもいいことだらけだろう。と考えるのは、あまりにも単細胞すぎるだろうか。
追記2.この新品種については以下に詳しく紹介しております。
http://www.winep.jp/news/153.html