- 2021/03/26 : 「被曝インフォデミック」西尾正道著(寿郎社 刊): これは真摯な科学者による遺言である
- 2021/01/25 : やっと動き出したか?博士課程奨学金 :だが詳細はまだ不明
- 2020/08/16 : 放射性セシウム関連の演題: 2020年日本土壌肥料学会岡山大会講演要旨からの抜粋
- 2020/08/12 : ヒガンバナの花の微量放射能内部汚染
- 2020/06/29 : サネカズラの放射能汚染
WINEPブログ
WINEPブログ内で「 値 」を含む記事
(5件づつ表示されます)

上掲の本が震災の10年目の2021年3月11日に出版された。
「被曝インフォデミック」西尾正道著(寿郎社 刊)
目次
第一章 棄民政策を続ける原子力ムラの事故後の対応
第二章 放射線治療医として
第三章 閾値(しきいち)とICRPの数値の欺瞞性
第四章 原発事故による放射線被曝を考える
第五章 隠蔽され続ける内部被曝の恐ろしさ
第六章 長寿命放射性元素体内取り込み症候群について
第七章 トリチウムの健康被害について
著者は放射線治療医として、本の腰巻の表表紙側に以下のように述べている。
原発事故10年をへても放射線による健康被害は軽視・無視され続けている。
政府の言うトリチウムの安全性、モニタリングポストの数値、被ばく線量の単位シーベルトを信じてはならない―― <内部被曝>も利用したがんの放射線治療に従事してきた医師による警告の書。
さらに本の腰巻の裏表紙側には
ICRP(国際放射線防護委員会)は、研究機関でもなく、調査機関でもない。実際は単なる民間のNPO団体なのである。民間の組織は目的をもって活動するが、ICRPの目的は原子力政策の推進であり、国際的な「原子力ムラ」の一部なのである。米国の意向に沿って原子力政策を推進する立場で核兵器の規制などを行っているIAEA(国際原子力機関)やUNSCEAR(国際放射線影響科学委員会)などと手を組み、原子力政策を推進するうえで支障のない内容で報告書を出しているのである。報告書作成に当たっては、各国の御用学者が会議に招聘され、都合の良い論文だけを採用して報告書は作られる。ICRP自体が調査したり、研究したりすることはない。このため、ICRPは多くの医学論文で低線量被ばくによる健康被害が報告されても、一切反論できず、無視する姿勢となっている。
本のあとがきでは
::::::::私は、この10年間の流れを見てきて、人生を閉じる前に、より多くの方々にこの”不都合な真実“ を知っていただきたいと思い、本書を書き残すことにした。:::::::
ーーーーー
とある。遺言である。
なお、インフォデミックというのはWHOの造語で「偽情報の拡散」を意味するということだそうである。
以下、先ほど、日経新聞が電子版で報じている。重要な情報なので、その一部を無断掲載した。
博士課程学生に生活費240万円 政府、7800人に支援
2021/1/25 11:00 日本経済新聞 電子版
政府は2021年度、博士課程に進学する学生の生活費を支援する新たな制度を設ける。大学を通じて1人当たり年240万円を支給する。7800人が対象になる。生活面から博士課程への進学を後押しし、日本の国際的な競争力の維持に欠かせない専門人材の育成につなげる。
各大学が学生を選び、国から大学に支援金を出す仕組みを整える。大学側が責任を持って対象者を選定するよう4分の1から3分の1程度は大学側にも負担を求める。
政府は博士課程への進学が国際競争力の維持に欠かせないとみる生活費を支援する博士課程の学生の一部には、研究費の支援も計画する。1人当たり年平均50万円ほどを見込む。制度を適用する大学は今後選ぶ。
人工知能(AI)や量子技術といった成長分野などに力をいれたり、就職支援を充実させたりする場合などを想定する。240万円は生活費を賄える額として設定した。政府は博士課程学生の生活を支えるために年180万~240万円が必要だと見積もる。18年度の日本学生支援機構(JASSO)の学生 調査で博士課程の生活費は平均230万円程度だった。
初年度の関連経費は230億円程度の予定だ。20年度第3次補正予算案に200億円、21年度 予算案には30億円をそれぞれ計上した。政府は大学の研究開発を後押しする10兆円規模の基金を官学で創設し、22年に運 用を始めると見込む。運用益が出始めれば支援金の原資に充てる。それまで政府が必要な予算を措置する方針だ。
博士課程の学生は日本全体でおよそ7万4000人いる。現在も支援策としてJASSO の奨学金などがあるが、生活費を満たす水準の枠は7500人にとどまる。政府は支援の拡大に力を注ぐ。年度内に21年度から5年間の科学技術政策の方針となる新たな科学技術イノベーション基本計画を決める。素案に生活費相当額の支給を受ける博士課程学生の比率を3割に高める目標を盛り込んだ。従来の計画は2割を目標値にしていた。今回の措置で達成する見込みがついたため、より高い目標を掲げて支援に力を入れる姿勢を打ち出す。
博士課程への進学を巡っては、経済面で行き詰まる可能性への不安感が根強いとみられる。 科学技術政策研究所(現在の科学技術・学術政策研究所)は08年に理系修士学生への調査を実施した。博士課程への進学検討に関し「一番重要」な項目の上位に「経済的支援の拡 充」(23.6%)や「民間の雇用」(21.6%)があがった。 博士課程への進学の後押しは日本の国際競争力を維持する観点からも重要だ。博士課程で専門分野の知見を深める学生が少なくなれば、先端分野などの研究を支える担い手も減るためだ。
日本は00年に修士課程の修了者の16.7%が博士課程に進んでいたが、18年には9.3%まで 落ち込んだ。国際比較でも00年度の人口100万人あたり博士号取得者数は日本が127人、米国が141人、韓国が131人でほぼ同水準だった。ところが15年度は米国は259人、韓国は256人と増加したのに対し、日本が118人にとどまった。
(森敏)
付記:以下に、「放射線像」の YouTubeを継続発信しております。ご笑覧ください。
https://www.youtube.com/channel/UCoxOKSbRGkZSNR7no2-7U9g
左端のナンバーは講演要旨のなかの、講演部門ナンバーである。発表の共著者名は、全部書くと長くなるので筆頭著者と最後尾著者名だけを示しています。
放射能汚染現場に立脚した研究テーマが、生態系レベルから遺伝子レベルまで、多面的な展開の様相を呈していることが見て取れます。
これまでにない、新しい発明や発見が生まれることを期待したいと思います。
ーーーーー
4-3-2 イオンビーム照射によるダイズのCs低吸収突然変異体の作出 川端美玖…頼泰樹
8-1-1 アマランサス(Amaranthus species)の導管液に焦点を当てたCs吸収(第2報) 村上敏文・・・小林浩幸
8-1-2 圃場内における交換性カリ含量のばらつきの補正によるコムギの放射性セシウム蓄積性の品種間差異の解析 久保田堅司・・・・信濃卓郎
8-1-3 放射性セシウム対策水田における灌漑水量調節によるカリウム流亡抑制効果の検証 錦織達啓・・宮津進
8-1-4 QTL-seq解析およびHRM解析によるダイズの放射性セシウム吸収に関与した遺伝マーカーの探索 宇多真梧・・・・福原いずみ
8-1-5 福島県相馬郡飯館村の農耕地土壌におけるNH4+濃度変化とCs脱着率の関係解析 浅野育美・・・・矢内純太
8-1-6 機械学習による土壌特性値空間分布の推定―放射性セシウム移行モデルの広域適用に向けて 矢ケ崎泰海・・・・山口紀子
8-1-7 土壌の放射性Cs移行性を評価するための非交換性カリ定量法の検討-水稲、ダイズ作における3手法間の比較― 若林正吉・・・・・矢内純太
8-1-8 東北地方の牧草地黒ボク土の放射性Cs吸着・K放出能に対する風成塵の影響解明 北川結理・・・・矢内純太
8-1-9 除染更新後に再更新した採草地における利用2年目までの牧草中放射性セシウムの移行について 渋谷岳・・・・吉田由里江
8-1-10 福島県内の農地における放射性物質に関する研究(第48報)福島県内不耕起未栽培農地における放射性セシウム鉛直分布の経時変化 中山秀貴・・片桐優亮
8-1-11 福島県内の農地における放射性物質に関する研究(第50報) 水稲の無カリポット栽培における非交換性カリ含量が玄米の放射性セシウム吸収に及ぼす影響 永井華澄・・・鈴木芳成
8-1-12 除染後営農再開農地における形態別放射性セシウム分布と作物移行係数の関係 井倉将人・栗島克明
8-1-13 玄米への137Cs移行に関する中干期の土壌中交換性カリ含量の寄与 津村恵人・・・松波麻耶
8-1-14 異なるカリ資材などの施用における交換性カリ含量と牧草中放射性セシウム濃度の推移 山田大吾・・・・吉田由里江
8-1-15 大柿ダム低質から溶出する137Csの灌漑水への寄与について 塚田祥文
8-1-16 福島県内の農地における放射性物質に関する研究(第49報)除染と保全管理後に作付け再開した水田における水稲生育ムラの解消技術の検討 松岡宏明・・・永田修
8-1-17 安定セシウム吸着試験による新鮮落ち葉などの有機物のセシウム保持能の評価 眞中卓也・・・・古沢仁美
8-1-18 灌漑水を介した粗大有機物流入による水田土壌への137Cs付加の可能性 高橋篤広・・・・原田直樹
8-1-19 黒ボク土草地土壌に添加した放射性セシウム及びヨウ素の牧草への移行性に及ぼす有機物施用の影響 武田晃・・・・久松俊一
8-1-20 福島県内の農地における放射性物質に関する研究(第51報-低カリウム条件下における各種飼料用米品種・系統の玄米中Cs-137濃度の比較 斎藤隆・・後藤昭俊
8-1-21 福島県内の農地における放射性物質に関する研究(第52報)-除染後農地における農地群内の土壌中のCs-37濃度の分布について― 根本知明・・・志村浩雄
(森敏)
実験室でガイガーカウンターで測定すると、ほとんどバックグラウンドに近い値であった。それでも新聞紙で何度も脱水して表面の各部位を測定すると、50cpmと非常に低い値であった。
それでも約4か月IP-プレートに感光して、放射線像を撮像すると、わずかに子房の部分が強く感光された。
撮像後、これらの3つの花を、各組織部位にばらして、部位ごとに合体して、ゲルマニウム半導体で約4.8日間(416111秒)かけて精密測定すると、わずかにCs-137ばかりでなくCs-134も検出できた(表1)。表1では子房の部分は(雄しべ+雌しべ)の部位に含まれている。
ヒガンバナは浅い根が強固に根茎がつながって群生しているが、秋口に抽苔するので、まだ抽苔していない2011年3月11-15日間の原発由来の放射能(フォールアウト)を直接は浴び無かったと思われる。したがって一般的にヒガンバナの放射能は低い。
当初のフォールアウトで、表層土壌に固着しなかった、可溶性成分が、秋に抽苔した植物体の新根によって吸収されたものが年集積される、ということを繰り返しているはずである。なので、放射能値は低いのだが、なかなか放射能がなくならない植物と思われる。竹やぶのタケノコが半減期減衰以上の速度では最近はなかなか放射能低下しにくいのと同じ理由である。

図1 ヒガンバナ

図2 図1のオートラジオグラフ
表1.ヒガンバナの放射能

(森敏)
付記:以前に飯館村のヤマユリを撮像したことがあるが、その時は種子が得られたので。放射性セシウムが次世代に移行することは早期に証明されている。
2015/01/16 : 山百合の放射能汚染像
眼の高さの一枝を失敬してきて、オートラジオグラフに撮像した(図2、図3)。
部位別に放射性セシウムの放射能測定すると、実が葉の2倍の値を示した(表1)。実の放射能がほかの部位よりも常に高いことはこれまでのすべての植物とも共通している。
一方、今回意外だったのは新芽が旧葉よりの放射能が半分以下だったことである。
いつもは放射性セシムは新葉(図1の左枝の先端1枚と、右枝の先端の2枚)が旧葉よりも高い値を示すのだが、今回は違った。
実(養分の吸引側:シンク)が成熟しているときには、全体の養分の貯蔵器官である旧葉(養分の供給側:ソース)からの養分が実の方に転流することが植物栄養学の常識である。
しかしその同じ時期に展開している新葉はまだ養分のシンク側でもあるはずなのだが、養分の吸引力が実よりも低くなっているのかもしれない。
要するにこの新葉は、今後成熟して光合成して、養分を同化しても、実が完熟してしまうと、転流先がなくて、ためた養分が不要になってしまう。いずれ枯れて落葉してしまう。だから、吸引力が低下しているのだろう。
と、サネカズラの身になって考えてみた。しかしこれは、サネカズラの体内でも、あくまでセシウムイオンがカリウンと同じ転流の挙動を示すものと仮定しての解釈であるのだが。
名にし負はば 逢坂山のさねかづら
人に知られで くるよしもがな
三条右大臣 後撰集

図1 サネカズラ 押し葉乾燥後なので赤い実が黒ずんで見える。一房に多数の実を着けている。
散らばっているのは押し葉にする前に前に飛び散った実。

図2 図1のオートラジオグラフ

図3 図2のネガテイブ画像。 新葉が旧葉よりも薄く写っていることがわかる
表1 サネカズラの放射能

(森敏)