武漢市が4月8日を期して「都市封鎖」を解除した。大勢の市民が恐る恐る住宅から外に出て、しかもその日のうちに数万人がただちに他の都市に流出した。ただし首都北京市だけは厳重警戒で入れないらしいが。
当然のことながら、武漢市内での中共ウイルスの再爆発と、他省への感染拡大が中国人民自身によって大いに懸念されている。
今回の武漢封鎖解除は、ただ武漢市での新しい中共ウイルス感染者発生数がゼロになったから、という理由のようだが、しかし、この中国当局の発表は全くあてにならない。現地から発信されている、個人のインターネット上では、すでに武漢での<新規患者の発生情報>が飛び交っている。つまりはこれは官製の<ゼロ数値>なのである。
先日4月10日の朝日新聞(朝刊)では、日本のマスコミで唯一武漢入りを許された平井良和記者の報道が3か所のページで、写真入りでだいだい的に掲載されていた。スクープのつもりなんだろうが、そもそも武漢に入れていない他紙(毎日、日経、読売、東京)は全く現地武漢からの報道がなかった。しかもこの朝日新聞の記事内容はまるで中国政府のプロパガンダであると思った。「記事内容は中国当局による検閲を受けていない」、とわざわざ朝日新聞編集部によるコメントがされているのだが、勘ぐるに、だからこの記事は朝日新聞編集部による中国側を怒らせないように慎重な検閲を受けており、全く無難な記事に仕上がっていると思ったことである。記者が気の毒だ。
何がいいたいかというと、武漢封鎖解除の科学的根拠が全くあいまいなままに、「武漢ではコロナは解決した、サー人民は生産に復帰しよう!」という習近平の命令が先行しているということである。
以下のアメリカ関連の記事に指摘されているように、現在の武漢住民の何パーセントが中共コロナウイルスに感染して抗体を獲得してコロナ耐性になっているかが全くわかっていない。なのになぜ「武漢封鎖を解く」という、政策決定ができるのだろうか? これは科学者ならだれの目にも全く解せないだろう。この点は統計学の初歩で、統計学者が口を酸っぱくして指摘していることである。
さすがにアメリカでは、産業復帰に向かって、はやってロックダウンの解除にむけて暴走しそうなトランプ大統領を、医療統計学者達がきっちりと抑えこんで、きちんとしたデータに基づく政策決定をすべきだと提言している。誤った政策決定(安易なロックダウン解除)はアメリカ中の各地での中共コロナウイルスの再発オーバーシュートを繰り返させるだけだからである。
翻って日本政府の中共コロナウイルス対策は、統計学者の出番がなくて、ロックダウンに至った政策もやらずぶったくりである。実に根拠が薄弱である。今後はおくればせながらでも、早急に、抗体キットを手に入れて、とりあえず数千人レベルでもいいから、数種類の有限母集団(例えば東京都庁の職員全員とか東京都のお医者さん集団とか)の抗体獲得率を調べて、まずはそれを基盤にして、行政が様々な手を打つべきであろう。
今のやり方は、水面下の潜在的感染者を全く見ていないで表面に顕在化した患者だけを見ている(悪くいえば、はらはらドキドキ一喜一憂して、駆け込んできたうちの感染者数や死者の数を眺めているだけ)である。欺瞞である。
このままでは、緊急事態宣言を解除する基準が全く設定されないまま、だらだらと自治体ごとの「外出禁止」と「外出解除」のイタチごっこが続くことだろう。
抗体検査、全米で実施検討 新型コロナの免疫確認
【ワシントン=鳳山太成】トランプ米大統領は10日の記者会見で、新型コロナウイルスへの免疫をもっているかを調べる抗体の検査を「とても迅速に承認するつもりだ」と述べ、全米実施を視野に検査の早期導入へ意欲を示した。米国の感染による死者数が「最低10万人とした(政府の)予測を大幅に下回るだろう」とも指摘。「なるべく早く経済を再開させたい」と述べ、抗体検査で免疫があると確認できた人から外出制限を外すなど、経済活動の早期再開をめざす考えをにじませた。
米では米国立衛生研究所(NIH)などが抗体検査の正確性を調べている。NIH傘下の国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は「1週間後には多くの検査が可能になる」と述べた。米国では食品医薬品局(FDA)がすでに抗体検査を研究目的で承認したケースが出ているが、トランプ氏の発言はより大規模な検査の承認を念頭においたものとみられる。
トランプ氏は10日、専門家会議を14日にも設置し、経済活動の再開へ具体策の議論を始めると表明した。再開には各地域での感染の広がりを詳しく把握することが不可欠で、大規模な抗体検査は大きな一歩となる。検査の精度や実効性は十分に保証されていない面もあり、早期検証が急務だ。
(森敏)
追記1:この記事を上梓した直後に、以下の記事が飛び込んできた。予想どおり、感染患者数が
オーバーシュート(感染爆発)する前に、非常事態宣言を発出して、人々の外出や活動を一定期間抑え込むという、現在国が採用している微調整の手法は、地域での医療崩壊を招かずにやるやり方かもしれないが、住民によるかなりの忍耐力と時間を要することになる。
それを、非常に言い方が悪い表現になるが、北海道が率先して現在進行形で「モグラたたき」の実証試験せざるを得なくなっているということである。
札幌市、小中高再び休校 感染者増加、5月6日まで
2020.4.12. 産経新聞
北海道の鈴木直道知事と札幌市の秋元克広市長は12日、今月6日以降順次授業を再開していた市内の小中高校を再び休校にすると明らかにした。新型コロナウイルス感染者の増加ペースが上昇していることが理由。期間は4月14日~5月6日まで。
道庁での会談後、記者団に明らかにした。鈴木知事と秋元市長は、道内の新たな感染者が5日連続で2桁となったことを踏まえ、「第2波とも言える感染拡大の危機」と指摘。5月6日まで、不要不急の外出や、国の緊急事態宣言が出された地域への往来を避けるよう呼び掛けた。
道内では鈴木知事が2月28日に国に先駆けて独自に「緊急事態宣言」を出し、外出自粛を呼び掛けたことで感染拡大が一定程度、抑えられたとみられていた。
追記2:翌日(本日4月13日)以下の記事が出た。要するに、このような調査が必要なのである。このデータを本日発表されている日本の患者の数値に当てはめると、顕在化していない感染者数は、
[7268人(感染者)-138人(死者)-767人(回復者)] x 28500人/7000人=25907人
となる。 これは漠然と小生の身の回りの医者たちが感じている数値よりもはるかに少ない(彼らは公式発表の100倍は潜在的感染者がいるだろうと考えているようだ)と思うが、これは最低限の推定値だろうと思う。
オーストリアのコロナ感染者、公式統計の4倍前後か=政府委託調査
2020/04/13 08:10
く[ウィーン 10日 ロイター] - オーストリアの新型コロナウイルス感染者は、公式統計の4倍前後で全人口の1%弱に達する――。政府が民間機関に委託した調査が10日公表され、こうした結果が判明した。
この調査は1-6日に無作為で選んだ1554人を対象に、選挙結果予測などで知られるSORAが実施。公式統計では死亡者と回復した人を除くウイルス感染者はおよそ7000人だが、実際には2万8500人前後に上るとの推計を導き出した。
SORAの共同創設者クリストフ・ホフィンガー氏は「調査に基づくと、4月上旬時点の感染者は人口の0.33%だと考えている」と語った。誤差を考慮すると、この割合は0.12%-0.76%の範囲になる蓋然性が95%に達する。
調査結果を事前に知らされていたクルツ首相も6日、感染者は人口の1%前後だと発言していた。
欧州大陸諸国でこの種の調査が行われたのは初めて。ウイルス検査態勢が不十分な点を踏まえ、感染の実態をより明確にする狙いで実施された。
オーストリアでは検査対象は、感染多発地帯に行ったことがあるか、感染者との濃厚接触者で症状がある人に限られている。従って無症状者や感染多発地帯と接点がない人は、検査を受けない。
追記3: 以下の報道のように、国がやっと抗体検査を始めるつもりになったようだ。
この中共ウイルスの件では、アドバルーンを上げても、実際にやるまでの期間が遅すぎるので、どうなることやら。
大都市では、感染患者発生がどんどんオーバーシュートに向かっている。
厚労省 「抗体検査」で流行把握へ
2010/04/16 23:48
新型コロナウイルスの流行状況を把握するため、厚生労働省が近く数千人を対象にした「抗体検査」を実施することが分かりました。
新型コロナウイルスに感染すると体内に抗体ができます。関係者によりますと、厚労省は数千人分の血液を検査し、抗体を持っている人数などから一定の範囲内で感染がどの程度広がっているかを試算します。この検査によって地域での流行状況や今後の感染拡大の見通しを見極める狙いがあるということです。新型コロナウイルスの抗体検査を巡っては、メーカーなどが検査キットの開発を進めていて、厚労省はこの抗体検査を通じて検査キットの性能評価も併せて行う考えです。
追記4:アメリカではロスアンゼルスが率先して、以下のような暫定的な抗体検査データを公表している。ニューヨークも抗体検査を始めた。知事によれば、数日後に結果が出るという。いっぽうで、何事もとろい日本の厚生省はたぶん1カ月ぐらい後から抗体検査を始めるのではないか。
感染者数、実際は55倍も 新型コロナ抗体検査で推計―米ロスアンゼルス
2014/04/21 16:00
【ロサンゼルス時事】米西部カリフォルニア州ロサンゼルス郡は20日、新型コロナウイルスの実際の感染者が、確認されている人数の28~55倍に及ぶという調査結果を発表した。郡と南カリフォルニア大学は、住民の抗体検査を継続的に約1000人ずつ実施しており、第1陣となる今月10、11両日の検査結果から推計した。
それによると、郡内の成人の4.1%が抗体を持っており、既に22万1000~44万2000人が感染していた可能性があるという。当時、確認されていた感染者は約8000人だった。郡は「従来考えられていたよりも、感染がはるかに広がっており、致死率は大幅に低いことを示唆している」と指摘した。