2016-09-17 10:06 | カテゴリ:未分類


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図1.桜の木につるしたハニ―トラップに沈没浮遊した昆虫類(黒い部分)

先日、1.5リットルのペットボトルの上部に 7センチx5センチ の四角い孔をあけた容器を作成し、現場で「はちみつ」と「白ワイン」を100gずつ混合した液を注ぎ込んだものを、虫が来そうな木の下にペットボトルの蓋にビニールひもを巻きつけて、適当な木の枝に吊るして回った。針葉樹は元来虫が集まりそうでないので桜などの広葉樹を選んで民家の庭や道端から少し離れた枝につるした。結局このトラップを浪江町の高放射能汚染地帯に合計6カ所設置した。

  

わずかに余ったはちみつと、白ワインは、もったいないので小生が痛飲した。空間線量毎時10マイクロシーベルトであったが、実にうまかった。

  

吊るした時間は昼間だったので虫がほとんどいなくて不安だったが、彼らは夜に活動して、ワインの香りに誘引されて、このトラップに飛び込んでくれるだろうと期待した。昨年は24時間設置しても一匹も入らなくてがっかりだったとらっぷもあったのだが、それは香りの成分がいけないのではなかったかと反省して、今回はコンビニで購入したフランス産の白ワインを使った。設置してみるとたしかに周囲の半径1メートルぐらいにはワイン独特の馥郁(ふくいく)たる香りが漂っていると感じられた。

  

翌日、約24時間たったころ、期待を込めて、このトラップの回収に出かけた。最初のトラップにはスズメバチが数匹、はちみつワインのなかの上層で必死で逃れようとうごめいていた(図1)。ハニ―トラップに「はまった」直後のようであった。ハチがはちみつが好きでトラップされるのはあたりまえか、と納得した。この初めてのトラップに成功して、気をよくして次々とポリビンを回収していった。驚いたことに、すべてのトラップに実にさまざまな虫がトラップされていた。

  

あるトラップには大型のアリが100匹以上トラップされていたのには驚いた。このアリたちは土から木の表面を伝わって上昇し、枝にくくりつけてあるトラップのビニールひもを伝わって降りて、ポリビンの表面から、7センチx5センチ四方の切り口から中に入って、ポリビンの内側にまわりこんで、内面を降りてはちみつワインに到達して、そこで次々とおぼれてしまったのである。溺れなかった先導アリが引き返して仲間にこのハニ―・トラップをつたえて、次々と仲間が集まって来ているようには見えなかった。おそらく香りにひかれて集まっておぼれるという一方通行の流れのように見えた。
 
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図2.穴の端に力技の強引な亀裂が入っている。また、黄色いラベルがはげしく汚れている。

  

驚いたことに、あるトラップには仕掛けたハニー・ワインがもぬけの殻になっていた。ポリビンの中にはいくつかの昆虫が張り付いていたのだが。ポリビンの底には子細に見ても穴が開いているようには見えない。ポリビンを吊るした木の下に粘り気のある液体がこぼれた気配もない。よく見るとポリビンの表面に張り付けている黄色い日時が記しているメモ用紙が汚れている。おまけに、切り取った切り口のコーナーには激しい亀裂が入っている(図2)。これは、ここから手を入れて「はちみつ」をなめようとしたか、ポリビンを破ろうとしたのだろう。しかし中身が全く空になっているところから、おそらくポリビンをさかさまにして、中身を飲み干したのだろうという結論に達した。そういう、人間のような動作ができる動物は5本指を持ったニホンザルしかいないはずだ。野生のサルはいい気分で酔っ払ったに違いない。予想もしなかった出来事であった。こういう予想外のことが起こるので、フィールドワークは病み付きになる。

  

小生は体力と運動神経が鈍くなってきたので、昆虫網をふりまわしてトンボやチョウチョウを迅速に捉えることが難しくなって来た。今後は、この方式で昆虫を捕まえて、放射能測定をするつもりだ。

  

昨年、このトラップされた昆虫類をオートラジオグラフに撮ると、蝶や蛾などは薄く、甲殻類が比較的濃く撮像された。
    
(森敏)
付記:今回の表題の「ハニートラップ:honeytrap」とは、Oxford Dictionaries によると、
"a strategem in which an attractive person entices another person into revealing information"  ということです。
たとえて言えば、旧ソビエト連邦のKGBなどの女性スパイが色気仕掛けで、他国家の重要人物に接近して、ベッドで国家機密を盗み取る、という構図が、米ソ冷戦時代のわれわれ老年世代に刷り込まれた、パターンです。


2016-09-07 12:25 | カテゴリ:未分類
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図1.蛇のように茎が太くのたうつアザミの茎
  




   

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 図2.指で挟んでいるこの茎の先端にはつぼみが6つくっついている。
 
 

   

 
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図3.根は意外と浅く簡単に土壌から引き抜けた。手前は小生の右足の靴。近くの他のアザミに比べて草丈は低く少し「倭化」しているように思われる。   

          

    
  関東の野山はアザミの最盛期である。散歩がてら観察していくと、実に奇妙なアザミを見つけた。まるで2,3匹のヘビが鎌首をもたげているようなのである(図1)。茎の根元が非常に太く、よく数えてみると茎の頭の先端が寸詰まりで、そこに蕾や花が、1つ、2つ、3つ、4つ、6つなどとついている。基本は3つの蕾のようである。明らかに帯化奇形である。
茎が伸びるにしたがって、分枝の位置が寸図まりになって行って、ついに蕾や花が集合した集合花になっている(図2)。

        

「アザミ」研究の権威である国立科学博物館の名誉研究員・理学博士・門田裕一氏の分類(https://www.kahaku.go.jp/research/db/botany/azami/search_word.html)を逐一検討したら、このアザミによく似たものにエチゼンオニアザミがあった。門田氏によれば、頭が2つばかり合体したアザミは珍しくはないということである。だから門田氏の分類の基準には、茎の先端の集合花の合体の数などは問題にしていないようである。

      

しかし福島原発事故以来、関東の帯化タンポポをこの5年間ずっと観察してきた小生の視点からいうと、このアザミの集合蕾(花)を持つ形質はいずれ進化的に固定して、新種になって行くのではないかと思われる。現在アザミの遺伝子については、どこまで読まれているのかわからないが、帯化に関する遺伝子(fas)はおそらく劣性ホモ遺伝子で、それが環境によって、変異を起こして、表現型が帯化として顕在化したものと思われるのである。

     

小生が見つけた変異種はすでに平均3つの集合花をつけるようになっているので、もし6つ以上の花をつけているアザミを見つけたら、小生が2014年に一番最初にこのようなアザミ株を見つけた場所である軽井沢の雲場池湖畔

2014/09/08 : 「6頭」の奇形アザミを見つけた

にちなんで「カルイザワアザミ」と名命し(門田氏によれば最初に見つけた場所で命名しているようなので)、俗称「クニコアザミ」と呼んでください。むろん牧野富太郎の「スエコザサ」にちなんだものです。自意識過剰老人の恥も外聞もないきざな話で恐縮です。

 

       

(森敏)

付記1: これまで観察してきた「帯化タンポポ」の場合は2頭のもの以外は、蕾が集合して合体して集合花になってしまっているものが大部分です。

タンポポの多様な奇形花房発見!! :植物に対する放射線の影響(II)
   

付記2:よく知られているようにいろいろな品種のケイトウ(鶏頭)の花は帯化遺伝子の変異が固定したものです。劣性ホモのfas遺伝子の対立遺伝子が二つとも欠失したか二つとも変異したものが園芸品種として選抜されたものです。

     

付記3: わが郷里高知の敬愛する牧野富太郎博士は積年の苦労を掛けた妻「寿衛子」にちなんで新しく発見した笹の品種を(スエコザサ)と命名しました。
     
付記4:門田氏が分類したアザミの中で唯一「コイブキアザミ」の蕾が、画像で判別する限り3頭の集合蕾になっているのですが、門田氏はそのような特徴に関して特段に言及をしていません。あきらかにfas遺伝子の変異種だと思われます。
  
付記5: fas遺伝子とは、この遺伝子が変異すると茎の 帯化(たいか:fasciation) を誘起する遺伝子のことです。
 
付記:
図4.図2の採取地点から10kmはなれた別の場所で採取した6頭アザミの写真です。うまく全貌の写真が取れないのですが、大輪の裏側に小さな2頭のつぼみが隠れています。
6頭のタンポポプレゼンテーション1

  


2016-09-03 09:27 | カテゴリ:未分類

東京の猛暑と酸素が薄く思われる毎朝のけだるさに参ってしまった。やむなく保養地の個人経営のペンションなるものをネットで探して、泊まった。ペンションは築28年だというので、隣室の声が聞こえるぐらいの簡素なつくりの建物であったが、台風一過の周りの景色はゴッホの絵画「糸杉」の世界だった。空気がきれいで、恰幅の良いペンションのオーナー・シェフの夕食がとてもおいしかった。濃厚な食後のコーヒーを入れていただいてそれを飲みながら「ここら辺は閑静な田舎のようですが、最近なにか面白い話でもありませんか?」とオーナーの奥さんに話しかけると、少し考えて「最近少し困ったことがありました」ということで以下の話をしてくれた。

 

「先日、若い男女二人が車で乗り付けて予約なしで泊まりに来ました。うちは飛込みでも宿泊を受けつけるので、お部屋に通しました。お客さんがコンビニに買い物にお出かけになられたりするのでうちは夜中でも出入り自由にしています。ですから夜中の車のエンジンの音などこれまで気にしておりませんでした。ところが、翌日の朝のお食事時になっも起きてこられないので、お部屋のドアをたたいたのですが、応答がありません。ですので、やむなくドアノブをひねるとドアが開きました。驚いたことにお部屋にはどなたもおられず、もぬけの殻でした。お部屋のキーは置いてありました。結局無断宿泊されちゃいました。こんなことはこのペンション経営を始めて以来の初めての経験ですので、本当に頭に来ちゃいました。今の若い人の感覚が理解できません。とっても人間不信に落ちいっちゃいました。捕まえて何とか懲らしめてやりたいものです」

といっても、奥さんは別に警察に届け出られた様子でもないようでした。

 

 翌日その地元のタクシーの運転手にこの話をしたら、「そんな話は私も初耳です。それではまるで『食い逃げ』ですね。宿泊の時に前払い制ではなかったんですね」という応答であった。

 

 この男女は全国あちこちで「スマホ」を利用して、ラブホテル代わりに、このような非常に良心的だが、わきの甘いペンションを荒らしまわっているのかもしれない。

 

このペンションでは廊下の踊り場に手塚治虫の文庫本全巻など漫画本の書架が設置してあった。そのなかに『どついたれ』という、小生がまだ読んでいない手塚の分厚い漫画があった。戦後の大阪を中心とした混乱した「やくざの世界」に染まらずたくましく生きる戦災孤児の世界を描いているのだが、珍しくも「未完」で終わっていた。読み終わるのに2時間かかった。手塚にしては珍しいリアリズムの筋書きの展開なのだが、彼にとっては未体験の世界ゆえに想像力が枯渇して、話の展開にいき詰まったマンガであることがありありだった。なぜだか少しほっとした。


(森敏)

 

2016-08-26 11:52 | カテゴリ:未分類

浪江の農業用水路に野生の水生「セリ」が生え始めていたので、長靴で降りて、丁寧に数株を採取した。根は用水路の放射能汚染土壌によって直接外部汚染しても仕方がないけれど、地上部は水にたえず洗われているので、葉は外部被曝はなく内部被爆だけだろうと思って、それを確認したかったからである。

 

セリは水にぬれて新聞紙にびったりとくっついてきれいに葉の形状を保存するための乾燥が難しかったが、何とかやり遂げて(図1)オートラジオグラフを撮像した(図2)。

(図1) ミズセリ(原図)反射しているのはセロテープです。
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 (図2) 図1のミズセリの オートラジオグラフ (上から4分の3が撮像されています)
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結果は、根に付着した土壌が一番濃く撮っているが、予想外にセリの体のあちこちにも用水路の放射性土壌粉末がこびりついた汚い画像になった。もちろん葉の部分も内部被曝している。新聞紙による乾燥作業中、どうも「乾きにくくて、新聞紙からはがしにくいなー」と思っていたのだが、どうやらセリの葉の表面は粘土などを粘着する分泌物質によって目に見えないくらい薄く覆われているのかもしれない。

 

農業用水には大雨が降ったときに森林の表土や、溜め池などから、いつも細かい泥や砂が流れ込んでいるので、いくら用水の泥を掻き出して除染しても無駄である。これらはいずれ下流の阿武隈川から海に流れ出ているのである。

 

用水の上流の森林を除染しない限り、用水から田圃に汚染土壌が流れ込むので、水田の除染後の用水管理が重要である。過去の鉱山廃液からのカドミウム汚染土壌では、水田の土壌を剥離したあと山土で客土しても、また何十年かのちには、鉱山採掘残土の堆積場などから用水を通じてカドミウムが水田に蓄積していくだろうという確実な試算がある。放射性セシウムの場合でも、たとえイネ(水稲)には吸収されにくい「土壌固着」の放射性セシウムになっていても、水田稲作栽培期間中に農業用水が水口(みなくち)から順次田面に拡散していく過程で放射能が集積していく可能性が高い。福島県や農水省ではこのあたりの長期観測体制はできているのだろうか? 是非モデル圃場を数カ所確保して長期にわたる実証試験をしてほしいものである(ひょっとして、もうしているのかな?)。

    

     

 (森敏)

2016-08-21 12:05 | カテゴリ:未分類

          男子陸上400メートルリレーでは山本亮太・飯塚翔太・桐生祥秀・ケンブリッジ飛鳥が絶妙な連係プレーで「銀」を獲った。

 

        それぞれの構成員は選手としても超一流であるが、まだ100メートル走では9秒台の記録を持たぬ、世界のトップ一、二の記録を持つ選手ではない。

 

        スポーツは人間がやるものだから、リレー競技では個人ではなく複数の人間が行うことに伴う必要な技術(この場合はアンダーハンドのバトンタッチなど)の創造が絶対的に必要なことであろう。だから、この「銀」の成果は個々人の能力に加うるに選手たちの相互の努力による相乗効果が加わったものである。その技術の絶対的な成就のためにはお互いの選手間の尖った「個」を押さえた「和」の信頼関係が絶対的に必要だったものと思われる。

 

        まさにこの日本のリレー競技は現段階でのスポーツ技術水準の粋を極めた戦いであったというべきだろう。全国民が酔いしれた。

 

        しかし、今回の「銀」の結果は一方では、「和」の精神だけでは、リレー競技では決してトップにはなり得ないのでないのではないか?という疑問も投げかけるものであった。

 

        最終走者のジャマイカのボルト選手はケンブリッジ飛鳥選手とほとんど同時に左手でバトンを受け取り、それをわざわざ余裕で右手に持ち替えて、当初飛鳥と接触しながらも、最終的には、悠々と飛鳥を抜き去ってトップでゴールしている。

 

        小生は、この場面を見ながら、太平洋戦争で日本軍が当時の新鋭機種と称された「零式戦闘機」で真珠湾奇襲攻撃をし、緒戦で勝利を治めたかのごとくであったが、その4年後(昭和20年)にはアメリカは大型遠距離用爆撃機B29を開発し、日本全国土を絨毯(ジュータン)爆撃し焦土化した末に、原爆を落とし日本を敗戦に追い込んだパターンを思い浮かべていた。

 

        秀才の「和」による小細工は時として勝利するのであるが、勝利し続けることは至難の業である。天才の「個」による独創には所詮歯が立たないのである。

 

        あたりまえのことであるが、東京オリンピックまで、あくまでダントツの「オンリーワン」の選手を育てるべきなのである。

 

(森敏)
追記1:余談だが、昭和20年夏、我が郷里高知市はB29の焼夷弾で焼け野原になった。旭駅前町の我が家の防空壕から見た東の空は真っ赤だった。兄たちはその焼け跡にまだ煙にくすぶる焼夷弾の鉄筒を拾いに行って、それを鉄くずとして売ったのだった。戦争を知らない安倍総理には、4年後の東京オリンピックを「一億総何とか::!!」というスローガンでの国威高揚の材料にしてもらいたくないとつくづく思う。
 
追記2:以下は蛇足です。
ボルトによれば彼らのリレーグループは「バトンタッチの練習を1回しかやらなかった」と報じられている。「バトンタッチ」の創意工夫による時間短縮はもともとリレーの本質ではない、あくまで本質は構成メンバーである個々の選手の「走力」なんだ、という認識なんですね。